ララミーから来た男

『ララミーから来た男』

『ララミーから来た男』は、1955年に公開されたアメリカの西部劇映画で、アンソニー・マンが監督を務め、名優ジェームズ・スチュアートが主演を務めています。この作品は、マンとスチュアートにとって5本目の西部劇であり、スクリーンサイズの革新であるシネマスコープを採用した初めての作品でもあります。また、彼らのコンビ作としては最後となる重要なフィルムでもあります。

映画は、西部の荒野を舞台に、復讐を果たそうとする一人の男の物語を描いています。主な登場人物は、ララミー砦の陸軍大尉ウィル・ロックハートで、彼は致命的な事件から始まる復讐心に燃えています。ウィルの弟は、インディアンによって連発銃で殺され、その背後にいる人物を探し出すために、幌馬車隊の商人としてララミーからニューメキシコ州へと向かいます。この復讐の旅は、彼を数々の試練に巻き込み、複雑な人間関係を生み出します。

物語が進む中で、ウィルは町を牛耳るバーブ牧場の手下たちに襲われ、塩や馬を奪われる事件に巻き込まれます。その後、アレックという牧場の主人がウィルに助けの手を差し伸べるものの、主人公と手下たちとの間には対立が生じたことが物語の緊張感を高めます。

また、映画では、ウィルが自らの復讐の対象を見つけ出すために、敵や友人との複雑な関係を築く過程も描かれています。特に、ヴィックという悪党キャラクターが登場し、ウィルの復讐劇をさらに緊迫させます。ヴィックは、アパッチと手を組もうとする一方で、他の手下との確執も抱えています。これによって、彼の企みが明らかになるにつれて、ウィルの行動もよりダイナミックになっていきます。

この映画は、単なる西部劇に留まらない、深い心理描写を持つニューロティック・スリラーの要素を取り入れています。主人公が抱える復讐心は、彼自身の精神状態に影響を与え、その苦悩が劇中で強調されます。映画を通じて、観客はウィルの心理的な旅を体験し、彼の選択や葛藤を通じて、西部劇としてのエンターテインメント性と、心の奥深くに迫るドラマを味わうことができます。

公開当初から多くの観客に愛され続けている本作は、1970年にTBSテレビの「月曜ロードショー」で放送されるなど、今なお古典的な名作として位置づけられています。映画愛好家にとって、ララミーから来た男は、復讐のドラマと心理的な深さが織り交ぜられた作品として、観る価値のある一作です。

もう一度検索