ランカストリア (客船)

ランカストリアは、元々はキュナード・ラインの子会社であるアンカー・ラインの客船「ティレニア」として1920年に進水しました。全長176メートル、総トン数16,243トンという大型客船であり、1,785人の乗客を収容することができました。1922年6月19日には処女航海に出発し、その華々しい歴史が始まりました。

1924年には「ランカストリア」と改名され、イギリスとニューヨークを結ぶ大西洋横断航路に就航しました。その後、1932年からは地中海や北ヨーロッパを巡るクルーズ船として活躍しました。しかし、第二次世界大戦の勃発により、その役割は大きく変わります。ランカストリアは貨物輸送に従事することになり、1940年4月には兵員輸送船として徴用され、ノルウェーからの撤退作戦にも参加しました。

そして、ランカストリアはダンケルクからの撤退作戦に続く、フランスからの撤退作戦である「エアリアル作戦」に参加しました。1940年6月14日にリヴァプールを出港し、6月16日にロワール川河口に到着。翌17日までに4,000人から9,000人もの兵士や民間人を乗船させました。

その日の午後4時頃、ランカストリアはドイツ空軍のJu 88爆撃機による攻撃を受けました。3発の直撃弾を受けたランカストリアは、大きく傾きながら沈没し、この悲劇的な事件で約4,000人もの命が失われました。幸いにも2,477人の生存者が救助されましたが、ランカストリアの沈没は、第二次世界大戦における海難事故の中でも特に悲惨な出来事の一つとして記憶されています。

ランカストリアの沈没は、その悲劇性から多くの人々に衝撃を与え、戦後のイギリスでは、その犠牲者を悼む慰霊碑が建てられました。また、この事件は、戦争の悲惨さと、人々の命の尊さを改めて認識させる教訓として、語り継がれています。客船としての華やかな歴史と、戦時中の悲劇的な沈没、ランカストリアの物語は、決して忘れてはならない歴史の一部です。

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