ランキング制 (柔道)

柔道ランキング制：国際大会と国内ランキングの詳細

柔道におけるランキング制は、2009年1月から施行された国際大会でのポイント制度です。この制度は、選手の国際大会での成績に応じてポイントを与え、そのポイントによってランキングを決定するものです。2012年のロンドンオリンピックでは、このポイントが選手の出場権を決定する重要な要素となりました。さらに、2014年からは国内ランキングも創設され、国内の選手選考にも影響を与えるようになっています。

世界ランキング

概要

2009年1月から始まったIJFワールド柔道ツアーでは、各大会の成績に応じて選手個人にポイントが付与されます。各国際大会は格付けされており、そのランクによって与えられるポイントが異なります。選手は獲得したポイント数によって順位付けされ、オリンピックの出場枠は男子上位22か国、女子上位14か国に与えられていました。東京オリンピックからは男女とも上位18名が出場できるようになりました。ランキング内に同じ国の選手が複数含まれる場合は、出場枠を満たすまで順位が繰り下げられます。ただし、1つの国からは1代表のみが出場できる原則は変わりません。ランキングに同国の選手が複数いる場合の選考は、その国に委ねられます。

また、ランキングに届かない国や地域のために、5大陸ごとに別途出場枠が設けられています。2014年からは、ジュニア（15歳以上21歳未満）とカデ（15歳以上18歳未満）にも世界ランキングが創設され、世界ジュニアや世界カデのシードに利用されています。

導入の背景

ランキング制導入の背景には、他の主要スポーツに倣い、競技者同士の実力を客観的に評価したいという目的があります。日本では、オリンピック代表選考において過去の実績が重視される傾向があり、選考基準が曖昧であるという批判がありました。ランキング制の導入により、各国際大会での成績が明確にポイント化され、実績のある選手でも国際大会でポイントを獲得する必要が出てきました。これにより、実績重視の選考方法を見直す機会となりました。しかし、故障や出産などで国際大会に出場できない期間があると、代表選考で不利になるという側面もあります。

また、ランキング制は柔道の商業化も目的としています。各国際大会にランクを付け、複数の優勝者を定期的に輩出することで大会を盛り上げ、優勝者には賞金を出すことで、テレビの放映権料を増大させることが期待されています。国際柔道連盟（IJF）会長のマリウス・ビゼールも、就任直後からポイント制度の導入を推進し、2008年10月のIJF理事会で決定されました。

ポイント算出方法

2009年1月1日時点で、全選手は0ポイントからスタートします。国際オリンピック委員会（IOC）の働きかけにより、オリンピック直前2年間のポイントを換算して出場資格を決定することになりました。2009年1月から獲得したポイントは、各国際大会でのシード権として利用されます。オリンピック直前2年以上前のポイントが少ない場合は、各国際大会の早いラウンドで強豪と当たる可能性が高くなります。また、ポイントの加算対象となるのは、12か月以内で好成績を収めた上位5大会のみです。

ロンドンオリンピック出場資格となるポイントの期日は以下の通りです。

2010年5月1日 - 2011年4月30日までの最大5試合のポイントを50%
2011年5月1日 - 2012年4月30日までの最大5試合のポイントを100%

として計算し、合計ポイントによって決定されます。

オリンピック出場資格とは別に、選手のランキングとして用いられるポイント計算方法は以下の通りです。

12か月（1年）以内…100%（減算無し）
13-24か月（2年）以内…50%（半分に減算）

2013年からは、各大会の獲得ポイントが変更され、ポイントの算出方法も、12か月以内で好成績を収めた上位5大会とワールドマスターズか大陸選手権のどちらかで得たポイントの計6大会がランキングポイントとなるように変更されました。

マスターズと大陸選手権の両大会に出場した場合、ポイントの高い方が6番目のポイントとして加算されます。低い方は上位5大会のうちの1つに組み込まれます。階級を変更した場合は、前の階級のポイントは持ち越されず、ゼロポイントからやり直しになります。国籍を変更した場合も同様に、ゼロポイントから新たにやり直しとなります。ただし、2022年からは元のポイントが持ち越されるようになりました。難民選手団に所属していた選手が新たな国籍を得た場合は、既存のポイントが引き継がれることが検討されていました。2017年からは、世界ジュニアの成績もシニアの世界ランキングにポイントとして反映されるようになりました。

オリンピックでメダルを獲得した選手のうち、2012年のロンドンオリンピックでは75%、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは87.5%が世界ランキングの上位8名に位置するシード選手でした。

2014年からは、世界団体におけるシードを決定するための国別ランキング制度が設定されました。世界選手権と大陸選手権の際に行われる団体戦がポイントの対象となり、個人戦同様にポイントが有効となるのは2年間です。

国内ランキング

概要

女子柔道強化選手への暴力問題を受けて、JOCや第三者委員会から代表選考過程の透明化を要請されたことを受け、全柔連は2014年からIJFによる世界ランキングとは別に、国内にも独自のランキングを制定しました。

ランキングは、規定された各種ポイントを2年間集計し、直近の1年間は100%、その前年は50％が有効ポイントとして加算されます。国際大会は点数の良い上位3大会が加算対象となります。また、ポイント以外にも、各大会で獲得できるポイントのうち、どの程度を獲得できたかも指標の対象とします。

ただし、このランキングは強化委員会において代表選手選考の参考資料として活用されるものの、これのみで代表選手が決定されることはありません。

国内大会勝利ポイント

国内大会では、講道館杯、全日本選抜体重別選手権、全日本選手権の3大会がランキングポイント対象大会となります。前年のオリンピックや世界選手権の代表になった選手には、国内大会勝利ポイントの他に80点が加算されます。世界選手権の第2代表だった選手には56点が加算されます。

国際大会出場基礎点

強化委員会によって選出されて国際大会に出場する選手には、大会のレベルに応じて出場基礎点が付与されていましたが、2017年からは取り止めとなりました。前年のオリンピックか世界選手権代表には代表点として80ポイントが付与されます。世界選手権の第2代表には56ポイントが付与されます（第1代表と第2代表に明確な差が認められない場合はどちらにも80ポイントが付与されます）。

国際大会勝利ポイント（レベル固定大会）

オリンピック、世界選手権、ワールドマスターズの3大会に関しては、出場選手のレベルに関わらず以下の勝利ポイントが付与されます。

国際大会勝利ポイント（レベル変動大会）

オリンピック、世界選手権、ワールドマスターズの3大会以外の国際大会に関しては、その大会でシードされた8名ないしは4名の世界ランキングの平均値をもとに大会の格付けが行われるため、大会ごとに勝利ポイントが変動します。具体的には、その大会に出場する日本選手を除く外国選手上位8名の世界ランキングの平均値によって、各種国際大会をA、B、C、Dの4段階に格付けします。

アジア大会、アジア選手権、東アジア大会などは出場国に制約があることを考慮に入れて、外国選手上位4名の世界ランキングの平均値をもとに格付けします。IJFのポイントランキング対象外になるシニアの国際大会や世界ジュニアは、一律Dレベルと規定します。

有力選手勝利ポイント

過去4年間のオリンピック、世界選手権、ワールドマスターズ優勝者に勝利した場合は、別途勝利ポイントが加算されます。

団体戦の国際大会勝利ポイント

世界選手権の団体戦で1試合勝利するごとに20ポイント、アジア大会及びアジア選手権では10ポイント、ユニバーシアード、東アジア選手権、世界ジュニアではそれぞれ5ポイントが付与されます。

関連項目

IJFワールド柔道ツアー

外部リンク

国内ポイントシステム

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