ランサローテ島

ランサローテ島（Lanzarote）

アフリカ大陸北西岸からおよそ125キロメートル、イベリア半島からは約1,000キロメートル離れた大西洋上に位置するランサローテ島は、スペイン領カナリア諸島を構成する島の一つです。カナリア諸島自治州ラス・パルマス県に属し、島の中心都市はアレシフェに置かれています。島の名称は、16世紀にこの地を訪れたジェノヴァの探検家、ランチェロット・マロチェロに由来すると伝えられています。

地理的に見ると、ランサローテ島は北緯29度2分56秒、西経13度37分12秒の座標に位置しており、南西方向約11キロメートルにはフエルテベントゥラ島が、北東方向約1キロメートルにはラ・グラシオーサ島がそれぞれ隣接しています。島全体の形状は北東から南西にかけて細長く、その面積は約845.94平方キロメートルです。

ランサローテ島の景観は、18世紀に発生した大規模な火山噴火によって決定づけられました。島全体が溶岩台地と300を超えるクレーターに覆われた、典型的な火山島としての特徴を色濃く有しています。特に島の東部に広がるティマンファヤ国立公園では、約200平方キロメートルにわたって広大な火山地形が迫力ある景観を作り出しています。このユニークな地質的特徴が評価され、ランサローテ島は近隣のチニホ群島（ラ・グラシオーザ島、モンターニャ・クララ島、ロケ・デル・エステ島、ロケ・デル・オエステ島、アレグランサ島）と共に、2015年にユネスコの世界ジオパークに指定されました。また、島一帯は1993年にはユネスコの生物圏保護区にも指定されており、その独特な自然環境が国際的に認識されています。

気候は乾燥帯に属する亜熱帯気候で、年間を通じて温暖ですが、貿易風の影響も受けています。この乾燥した環境に適応した植物が多く見られ、島の植生は厳しい自然条件の中で独自の進化を遂げてきました。

農業、特にブドウ栽培においても、ランサローテ島は特異な歴史を持っています。19世紀後半、ヨーロッパ中のブドウ畑がフィロキセラと呼ばれる害虫によって壊滅的な被害を受ける中、乾燥した土壌と隔離された地理条件により、ランサローテ島ではフィロキセラの被害が及びませんでした。このため、島の土着品種であるマルヴァジア種のブドウが生き残り、現在でも樹齢100年を超える古木から高品質なワインが生産されています。

人口動態を見ると、2010年時点のランサローテ島の総人口は約139,000人で、2006年の約127,000人から9.4％増加しました。人口の約59,000人は中心都市アレシフェに集中しています。住民構成は多様で、約73.9％がスペイン人ですが、イギリス人、ドイツ人、アイルランド人など他のヨーロッパ諸国出身者が相当数を占め、さらにコロンビア、モロッコ、エクアドル、西アフリカ、中華人民共和国、インドなど、様々な国からの移住者が人口の約15.6％を構成しています。

島の経済を支える主要産業は観光です。かつては農業が唯一の産業でしたが、過去40年間にわたり観光業が飛躍的に発展し、島の経済の柱となっています。島の玄関口であるアレシフェ空港は国際空港として機能しており、2008年には年間500万人以上の旅行者がこの空港を利用しました。

ランサローテ島の紋章には「悪魔」が描かれています。これは、初期の開拓者たちが大規模な火山噴火を目の当たりにし、それを悪魔の仕業だと恐れたことに由来すると言われています。

行政上、ランサローテ島はラス・パルマス県の一部を形成し、以下の7つの自治体に分割されています。

アレシフェ（Arrecife）
アリア（Haría）
サン・バルトロメ（San Bartolomé）
テギセ（Teguise）
ティアス（Tías）
ティナホ（Tinajo）
* ヤイサ（Yaiza）

文化的な側面では、ランサローテ島は多くの芸術家や作家にインスピレーションを与えてきました。フランスの作家ミシェル・ウエルベックは、この島を舞台にした小説『ランサローテ島』を執筆しています。また、ポルトガルのノーベル文学賞作家ジョゼ・サラマーゴは晩年をランサローテ島で過ごし、2010年にこの地でその生涯を終えました。映画のロケ地としても知られ、『恐竜100万年』、『銀河伝説クルール』、『第5惑星』、『抱擁のかけら』などがここで撮影されました。音楽の世界でも、リンドストロムとトッド・テリエによる楽曲「Lanzarote」など、島の名を冠した作品が存在します。観光名所としては、スペイン初の海底美術館であるアトランティコ海底美術館などがあります。独特の自然、文化、そして歴史を持つランサローテ島は、大西洋に浮かぶ魅力的な存在であり続けています。

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