ラントとライヒの均制化に関する暫定法律

ラントとライヒの均制化：ナチス政権による地方自治体の解体

1933年3月31日、ナチス・ドイツにおいて「ラントとライヒの均制化に関する暫定法律」が制定されました。この法律は、地方自治体（ラント）と中央政府（ライヒ）の権力関係を劇的に変化させ、ナチス政権による全体主義的な統治体制確立への重要な一歩となりました。

ヴァイマル共和政下の地方自治

ヴァイマル共和政下では、ドイツの地方自治体は、現在のスイスやフランスのような広範な自治権を有していました。しかし、強力な中央集権化を目指すナチスにとって、この地方分権体制は大きな障害となりました。ナチスは、段階的に地方自治体の権限を弱体化させる政策を進めていきました。

既に1920年代から、財政面での介入が始まっていました。1920年3月30日の収益分配立法など、州税法の改正によって地方自治体の財政的独立性は徐々に失われ始めました。ワイマール共和国の大半の政党は統一国家の創設を支持していましたが、いくつかの保守政党は連邦主義を維持しようとしました。しかし、ナチスなど一部の勢力は、多元主義を排除し、独裁体制を構築することを目指していました。

1932年7月20日のプロイセン・クーデターは、この流れを加速させました。プロイセン自由州は事実上、ライヒ政府に吸収され、中央政府による地方への支配は強まりました。

「ラントとライヒの均制化に関する暫定法律」とその後

全権委任法によってほぼ無制限の立法権を得たヒトラー内閣は、その成立からわずか2か月後、この法律を公布しました。この法律により、ラント政府は憲法で定められた範囲を超える立法権を認められなくなり、ラント議会は解散、議席数はナチスによる選挙結果（共産党の議席を除く）に基づいて再編成されました。

続く1933年4月7日には、「ラントとライヒの均制化に関する第二法律」が施行され、「国家代理官（Reichsstatthalter）」が設置されました。国家代理官は大統領が首相の推薦に基づいて任命され、州政府の人事から立法、恩赦まで、極めて広範な権限を掌握しました。

1934年1月30日には、「ライヒ新構成法」が制定され、ラント議会は廃止、ラントは国家に完全に服属する存在となりました。内相ヴィルヘルム・フリックの言葉「ラントはライヒの執行機関に過ぎない」が示す通り、地方自治体は名実ともに解体されました。

結論

「ラントとライヒの均制化に関する暫定法律」は、ナチス政権による地方自治体の解体と中央集権化の重要な転換点となりました。この法律によって、ナチスは地方への支配を強め、全体主義的な統治体制を確立するための基盤を築きました。この過程は、ワイマール共和政下の政治構造の崩壊と、ナチスによる強制的同一化政策の一端を示す重要な出来事と言えるでしょう。地方自治体の解体によって、ナチスは政治的反対勢力の排除を容易にし、自らの権力を強化したのです。この歴史的出来事は、民主主義と地方分権の重要性を改めて認識させるものです。

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