ラヴォワジエ夫妻の肖像

ラヴォワジエ夫妻の肖像について

『ラヴォワジエ夫妻の肖像』は、フランスの新古典主義の巨匠ジャック＝ルイ・ダヴィッドが1788年に制作した油彩とされる二重肖像画です。この作品は、著名な化学者アントワーヌ＝ローラン・ド・ラヴォワジエとその妻マリー＝アンヌ・ピエレット・ポールズを描いており、彼らが生前に描かれた唯一の肖像画として知られています。現在、この作品はメトロポリタン美術館に所蔵されています。

アントワーヌ＝ローラン・ラヴォワジエの生涯

アントワーヌ＝ローラン・ラヴォワジエは、現代化学の父と称され、火薬や酸素、水の化学組成に関する多くの先駆的研究を行ったことで知られています。彼は化学者であるのみならず、著名な投資家や行政家としても名を馳せました。徴税請負人としての活動では、パリ周辺に城壁を築いて密輸を防ぎ、物品の税収を厳重に管理しましたが、これにより市民からは厳しい評価を受けました。しかし、その業績は火薬と硝石の製造請負制を廃止し、国内生産を促進し、価格の低下と品質改善に寄与したことを示しています。

また、彼は1789年に主著『化学原論』を出版しており、妻のマリー＝アンヌはこの著作に多大な影響を与えました。二人は1771年に結婚し、彼女はラヴォワジエの秘書であり助手として、研究に協力し続けたのです。

夫妻の肖像の特徴

本作品では、ダヴィッドはラヴォワジエ夫妻を全身肖像として描き出し、ラヴォワジエが45歳、マリー＝アンヌが30歳のころの姿が表現されています。彼の机には書類や実験室器具が並んでおり、化学者としての彼の生活が覗えます。ラヴォワジエは赤いベルベットのテーブルクロスの上に置かれた机の前にゆったりと座り、妻はその横に立ちながら彼に寄り添う姿勢で、明るい微笑みを浮かべています。彼女の衣装は当時流行していたもので、華やかさが際立っています。

机上には、様々な実験器具が配置されており、ラヴォワジエが著作『化学原論』の校正作業を行っていることを示唆しています。特にガス測定器は、彼の研究の重要な道具でした。

作品の歴史

ラヴォワジエはこの肖像画のために7000リーヴルという多額の費用を支払ったとされます。しかし、この作品は1789年のサロンへの出展時に直前で取り下げられ、長い間一般に公開されませんでした。その後、ラヴォワジエの処刑後、この肖像画は彼の未亡人マリー＝アンヌの手に渡り、彼女の親戚や後の経歴を経て、1924年にはアメリカの実業家ジョン・ロックフェラーによって買い取られ、最終的にはメトロポリタン美術館に所蔵されることとなります。

まとめ

『ラヴォワジエ夫妻の肖像』は、単なる肖像画に留まらず、科学史とその時代の社会背景を映し出しています。この作品を通じて、ラヴォワジエ夫妻の深い愛情と知的な関係性、そしてその影響力を感じ取ることができます。彼らの存在は新古典主義芸術や科学の発展に貢献した象徴的な存在であることを、今もなお私たちに教えてくれるのです。

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