ラヴ・シャック

ラヴ・シャック (Love Shack)

「ラヴ・シャック」は、アメリカ合衆国のユニークなニュー・ウェーブ・バンド、The B-52'sによって1989年に発表された楽曲です。その発表から時を経てもなお色褪せない、陽気でエネルギーに満ちたサウンドとコーラス・ワークが特徴であり、バンドにとって最大のヒット曲となりました。音楽雑誌『ローリング・ストーン』が選定する「オールタイム・グレイテスト・ソング500」（2010年版）では246位にランクインしており、その音楽史における重要性も高く評価されています。

楽曲誕生の背景

この楽曲が生まれた背景には、バンドにとっての深い悲しみとそこからの再起というドラマがありました。1985年10月、バンドはギタリストのリッキー・ウィルソンをエイズによる合併症で失います。彼の死はメンバーに大きな衝撃を与え、特にリッキーの妹であり、ボーカルを務めるシンディ・ウィルソンの落ち込みは深刻で、バンドは一時的に活動休止状態に陥りました。リッキーが生前に制作に関わっていたアルバム『Bouncing Off the Satellites』は、トニー・マンスフィールドのプロデュースの下、1986年に完成・発表されたものの、バンドの活動は停滞していました。

しかし、数年の沈黙を経て、ドラムからギタリストに転向していたキース・ストリックランドが新たに書き溜めた楽曲をメンバーに披露したことがきっかけとなり、1988年にバンドは再び集まり、新しいアルバムの制作に着手します。プロデューサーには、当初ナイル・ロジャースが候補に挙がっていましたが、スケジュールの都合がつかなかったため、代わりに敏腕プロデューサーであるドン・ウォズが迎えられました。ウォズは、後に彼らの大成功を決定づけるアルバム『Cosmic Thing』に収録された全10曲のうち、「ラヴ・シャック」を含む4曲のプロデュースを担当することになります。

インスピレーションと制作

「ラヴ・シャック」のインスピレーション源は、バンドの出身地であるジョージア州アセンズに実在した古いキャビンでした。このキャビンは、バンドが「ロック・ロブスター」といった初期の代表曲を制作する際にリハーサルや曲作りを行った思い出の場所であり、ボーカリストのケイト・ピアソンが1970年代に実際に住んでいた時期もありました。バンドの歴史と深く結びついたこの場所の雰囲気が、楽曲の持つ開放的でファンキーなフィーリングに繋がっているのです。残念ながら、この象徴的な建物は2004年に火災により焼失してしまいました。

リリースと世界的な成功

「ラヴ・シャック」が収録されたアルバム『Cosmic Thing』は、1989年6月27日にリリースされました。アルバムからのシングルカットとして、「ラヴ・シャック」は同年8月に発表されます。7インチ・シングルに加えて、クラブシーンを意識した12インチ・シングル盤も発売されました。この楽曲は瞬く間に世界中で人気を博し、アメリカの主要シングルチャートであるビルボード・Hot 100では最高位3位を記録しました。さらに、イギリスでは2位、カナダでは5位、そしてオーストラリア、ニュージーランド、アイルランドといった国々では見事1位を獲得するなど、世界各国でチャートを駆け上がりました。ビルボードの1989年年間チャートでは47位にランクインしており、その年の音楽シーンにおける重要な一曲であったことが分かります。

楽曲の世界観を視覚化したミュージック・ビデオも同時に制作されました。監督はアダム・バーンスタインが務め、ニューヨーク州ハイランドにあるバンドの友人の自宅兼スタジオで撮影が行われました。

主なカバー・バージョン

「ラヴ・シャック」はその人気ゆえに、多くのアーティストによってカバーされています。主な例としては以下のようなものがあります。

ボブ・リヴァーズ&トゥイステッド・レイディオ: 1997年のアルバム『More Twisted Christmas』に、クリスマスをテーマにした歌詞に変え「Toy Sack」というタイトルで収録。
ブライアン・ブロンバーグ: 2009年のアルバム『It Is What It Is』に収録。
シュガーランド: 2009年のライブ・アルバム『Live on the Inside』に収録。
レイク・ストリート・ダイヴ: 2014年10月にハロウィーン企画としてインターネットで動画配信。

「ラヴ・シャック」は、メンバーの悲劇を乗り越え、バンドが再び創造的なエネルギーを取り戻したことを示す記念碑的な楽曲であり、その感染力のあるリズムとユニークなボーカル・スタイルは、今もなお多くの人々を魅了し続けています。まさに「ラヴ・シャック」というタイトルが示す通り、喜びと自由が溢れるパーティー空間へと聴く者を誘う、普遍的なパーティーアンセムと言えるでしょう。

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