ラ・カンブル (学校)

ラ・カンブル（La Cambre）は、ベルギーの首都ブリュッセルに位置する国立の高等芸術学校です。正式名称はエコール・ナシオナル・シュペリウール・デザール・ヴィジュアル・ドゥ・ラ・カンブル（École nationale supérieure des arts visuels de La Cambre）といい、日本語ではラ・カンブル国立美術学校、ベルギー国立建築視覚芸術大学、国立ラ・カンブル美術大学など、様々な名称で呼ばれています。

この学校は、高校を卒業した者が進学する高等教育機関であり、学術的な研究よりも実践的な技術や技能の習得に重点を置いている点が特徴です。一部の学科では、実社会での研修制度であるスタージュや、美術教育における伝統的なアトリエ制を採用しており、より実践的な教育を提供しています。

沿革

ラ・カンブルの歴史は、建築と視覚芸術の分野における教育機関として始まりました。その起源は、20世紀初頭に改革建築家ヴィクトール・オルタが設立した高等研究所に遡ります。1927年には、アントワープ出身の建築家であり画家、デザイナーでもあるアンリ・ヴァン・ド・ヴェルドによって、ブリュッセルのアカデミー・デ・ボザールの後継として設立されました。ヴァン・ド・ヴェルドは、ドイツのワイマールでバウハウスの前身ともいえる建築美術学校を運営した経験を持ち、ラ・カンブルもまた、建築および関連する応用美術の教育機関としてスタートしました。

創設当初の正式名称は高等芸術装飾研究所（Institut supérieur des Arts décoratifs）でしたが、学校がカンブル大修道院の敷地内に位置していたことから、徐々に「ラ・カンブル」の通称で広く知られるようになりました。

その後、組織改編が行われ、1980年には視覚芸術分野を担う国立高等視覚芸術学校（ENSAV / LA CAMBRE）と、フランス語共同体圏における建築分野を担う高等建築研究機関（ISACF）という二つの独立した学校に分かれました。さらに、2009年にはフランス語共同体圏内の建築課程を持つ高等教育機関が、四つの主要なフランス語圏大学へと統合される流れの中で、ISACFラ・カンブル・オルタはブリュッセル自由大学（ULB）に合流し、「建築学部ラ・カンブル-オルタ」として新たな一歩を踏み出しました。この統合により、それまで存在しなかった博士課程が新たに設けられ、研究機関としての側面も持つことになりました。

キャンパス

ラ・カンブル（ENSAV）の主な校舎として利用されているのは、ブリュッセル中央駅から南へ約4キロメートル離れたカンブルの森の中に位置する、歴史あるカンブル大修道院（所在地：カンブル大修道院21番地）の建物です。この修道院は12世紀末に建てられ、宗教戦争による破壊を経て17世紀に再建されたもので、その一部は曜日・時間限定で見学が可能です。

学校の敷地は修道院の建物だけでなく、道を隔てた複数の建物にも広がっています。ルイーズ通りに面した一般的な建物や、フランクリン・ルーズベルト通りに面する建物などがあり、特に後者には、初代学長アンリ・ヴァン・ド・ヴェルドが設計したアールデコ様式の内装を持つ通称「ヴァン・デ・ヴェルデ館（HÔTEL VAN DE VELDE）」が含まれています。

構成

ラ・カンブルには約700名の学生が在籍しており、以下の18の学科（「オプション」と呼ばれる）で専門分野を学んでいます。

版画・グラフィックデザイン・イラストレーション
描画
都市景観デザイン
絵画
彫刻
写真
テキスタイルデザイン
空間デザイン
陶芸
家具デザイン・内装
ファッションデザイン
アクセサリーデザイン
インダストリアルデザイン
修復・保全
舞台美術
映画
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グラフィックコミュニケーション

歴代学長

創設者であるアンリ・ヴァン・ド・ヴェルドが初代学長を務めた後、ヘルマン・タイルリンク（詩人、劇作家）、レオン・スタイネン（建築家）、ロベール＝ルイ・デルヴォワ（美術史家）、ジョゼフ・ノワレ（著述家）、フランス・ボレル（美術史家）らが学長を歴任しました。現在はカロリーヌ・ミエロップが学長を、バルバラ・クグリエッタが副学長を務めています。

ラ・カンブルは、歴史ある環境の中で、建築、視覚芸術、デザインといった幅広い分野において、理論と実践を融合させた質の高い教育を提供し続けています。

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