リアルタイムキネマティック

リアルタイムキネマティック（RTK）は、衛星測位システム（GNSS）から得られる位置情報に、地上に設置された基準局からの補正情報をリアルタイムで加えることで、位置情報の精度を大幅に向上させる技術です。従来のGNSS測位では数メートル程度の誤差が生じることがありましたが、RTK技術を用いることで、センチメートル単位という非常に高精度な測位が可能になります。

RTKの仕組み

RTKシステムは、通常、固定された基地局と、位置を測定する複数の移動局で構成されます。基地局は、既知の正確な位置に設置され、GNSS衛星からの信号を受信して、その位相を観測します。この観測データは、移動局に送信されます。移動局は、自身の受信したGNSS信号の位相と、基地局から受信した位相データを比較することで、相対的な位置を非常に正確に算出できます。この際、信号搬送波の位相積算値データを使用し、リアルタイムで補正処理を行うことで、高精度な測位が実現されます。

補正信号の伝送には、主にUHF帯の無線モデムが使用され、多くの国でRTK用に特定の周波数が割り当てられています。そのため、多くの測量機器には標準オプションとしてUHF帯の無線モデムが内蔵されています。RTKの精度は、基地局からの距離に依存し、一般的には約20km以内であれば高精度な測位が可能です。水平方向の精度は1センチメートル±2ppm、垂直方向の精度は2センチメートル±2ppm程度が一般的です。

日本におけるRTK

日本では、国土地理院が全国に約1,300箇所の電子基準点を設置しており、ソフトバンクも独自に約3,300箇所の基準点を設けています。このため、諸外国のように利用者が独自に基準局を設置する必要がなく、RTKによる高精度測位が容易に行える環境が整っています。

その他の計測方法

RTKシステムには、単一の基地局を用いる方法以外に、複数の基地局からなるネットワークを利用する方法も存在します。連続観測基準点（CORS）ネットワークは、インターネットを通じて補正情報を送信するRTK基地局のネットワークです。CORSでは、複数の局が正しい位置を示すことで、単一基地局の誤った初期化を防ぎ、より高い精度を実現します。また、仮想基準点ネットワーク（VRN）も、基地局を直接使用せずに精度を高める手法として利用されています。

RTKの応用

RTKは、高精度な位置情報をリアルタイムで得られるため、測量分野で広く利用されているだけでなく、無人航空機（ドローン）の精密な飛行制御や、農業用自動運転車の自動操舵など、幅広い分野で応用が進んでいます。特に、自動運転や精密農業などの分野では、RTKによるセンチメートル単位の高精度な位置情報が不可欠となっています。

RTKの別名

RTKは、その原理から、搬送波位相強化（Carrier-phase enhancement）技術としても知られており、CPGPSとも呼ばれることがあります。また、リアルタイムキネマティックGPS、ネットワーク型RTK、RTK-GNSSといった名称も用いられます。

まとめ

RTKは、高精度な位置情報を提供する重要な技術であり、今後の技術発展とともに、さらに幅広い分野での応用が期待されます。日本においては、電子基準点網の整備により、誰もがRTK技術を容易に利用できる環境が整っています。

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