モデム

モデム：アナログとデジタルの架け橋

モデムは、コンピュータなどのデジタル機器とアナログ通信回線との間の信号変換を行う装置です。デジタル信号をアナログ信号に変換して送信し、逆にアナログ信号を受信してデジタル信号に変換することで、データの送受信を可能にします。このため、変復調装置とも呼ばれます。その名称は、変調器(modulator)と復調器(demodulator)の頭文字を組み合わせたものです。

モデムの役割と種類

モデムは、通信回線の種類によって様々な形態があります。かつては、アナログ電話回線を用いたダイヤルアップ接続が一般的でしたが、近年ではADSL、ケーブルモデム、無線モデムなど、高速なデジタル通信に対応したモデムが主流となっています。

アナログ電話回線用モデム: 音声通信用の電話回線を使い、デジタルデータを「音」に変換して送受信します。通信速度は300bpsから56kbps程度です。ダイヤルアップ接続でインターネットに接続したり、FAX通信を行うために使用されました。
ADSLモデム: アナログ電話回線を利用しながら、デジタルデータの高速通信を可能にする技術です。電話回線とデータ通信を同時に行えます。
ケーブルモデム: ケーブルテレビの同軸ケーブルを利用した高速インターネット接続に用いられます。
無線モデム: 無線通信回線（携帯電話回線、Wi-Fiなど）を通じてデータを送受信します。モバイル通信や、無線LAN接続に利用されます。
衛星モデム: 通信衛星を用いた通信に利用されます。

モデムのインタフェースと通信方式

モデムは、コンピュータとの接続方法も時代とともに変化してきました。初期のモデムはRS-232Cなどのシリアルポートで接続されていましたが、現在ではUSBやLANポート（イーサネット）が一般的です。

通信方式には、単方向、半二重、全二重があります。

単方向: 一方向のみの通信しかできません。
半二重: 送信と受信を交互に行います。
全二重: 送信と受信を同時に行えます。現在では、全二重方式が一般的です。

また、通信の同期方法として、同期式と非同期式があります。非同期式モデムは一般的に使用されますが、同期式モデムはより高速で確実な通信が可能です。

モデムの種類：技術的な詳細

モデムは、その内部構造や制御方法によって、いくつかの種類に分類されます。

MMモデム: 手動で回線を切り替える必要のあるモデム。
インテリジェントモデム: モデム内部に制御機能を備え、自動的に回線を制御します。ヘイズATコマンドという業界標準のコマンド体系を用いて制御されます。
ソフトモデム: モデムの処理の一部をコンピュータのCPUで行うモデム。部品点数が少なくコストが安価ですが、CPU負荷が高くなる場合があります。
モデムホン: 電話機とモデムが一体となった装置。
FAXモデム: FAX通信に対応したモデム。
ボイスモデム: データ通信と音声通信を同時に行えるモデム。

モデムと通信速度

モデムの通信速度は、bps（bit per second）で表されます。通信速度は、使用するモデム規格や通信プロトコル、回線品質などに依存します。Bell規格、ITU-T規格など様々な規格が存在し、それぞれ異なる通信速度と機能を備えています。また、MNPやLAPMなどのデータ圧縮技術により、実効的な通信速度を高めることができます。V.90やV.92といった規格では、56kbpsもの高速通信が実現されました。

モデムの歴史と発展

モデムは1962年にBell 103モデムが登場したのを皮切りに、技術革新を繰り返してきました。日本では、1985年の電気通信事業法の改正と端末機器自由化により、モデムを含む通信機器の市場が大きく発展しました。ダイヤルアップ接続によるパソコン通信の普及、インターネットの商用化、ADSLやブロードバンド回線の普及など、通信技術の進歩とともにモデムも進化し続けています。しかし、近年では無線LANやモバイルデータ通信の普及により、従来型のモデムの需要は減少しています。

まとめ

モデムは、デジタル機器とアナログ通信回線をつなぐ重要な役割を担ってきました。通信技術の発展に伴い、その種類や機能も多様化してきました。現在では、高速なデジタル通信が可能なADSLモデムやケーブルモデム、無線モデムなどが主流となっていますが、未だに特殊な用途では従来型のモデムが使用されています。

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