リアーヌ・ド・プジー

リアーヌ・ド・プジーの生涯

リアーヌ・ド・プジー（Liane de Pougy, 1869年7月2日 - 1950年12月26日）は、フランスのベル・エポック期を代表する人物です。彼女は、フォリー・ベルジェールのダンサーとして、そしてパリで最も美しく高名な高級娼婦（クルチザンヌ）の一人としてその名を知られました。本名をアンヌ・マリー・シャッセーニュ（Anne Marie Chassaigne）といい、サルト県ラ・フレーシュで生まれ、女子修道院で育ちました。

結婚と離婚、そして新たな道へ

16歳で海軍士官のアルマン・プルプ（Armand Pourpe）と駆け落ちし、妊娠をきっかけに結婚しましたが、その結婚生活は決して幸せなものではありませんでした。夫アルマンは彼女に暴力を振るい、深い心の傷を負わせました。後に、夫の暴力と浮気が原因で離婚を決意し、息子を置いてパリへと向かいました。この結婚の失敗が、彼女を女優と売春婦の道へと進ませるきっかけとなりました。そして、コカインと阿片を乱用する生活が始まりました。

高級娼婦としての成功

高級娼婦としてのキャリアは、ヴァルテス・ド・ラ・ビーニュ伯爵夫人（the Countess Valtesse de la Bigne）の下で始まりました。伯爵夫人はアンヌ・マリーにプロの技術を教え込みました。プジーは、その美貌と魅力で多くの人々を魅了し、パリの社交界で名を馳せるようになりました。彼女はフォリー・ベルジェールでラ・ベル・オテロのライバルと目されるほどの地位に上り詰めました。また、愛人の一人であったド・プジー伯爵（Comte de Pougy）（もしくは子爵（Vicomte））の姓を名乗るようにもなりました。

教養と芸術への関心

プジーは、虚栄心が強い一方で、決して愚かではありませんでした。絵画や文学、詩にも関心を持ち、教養を深めました。しかし、シェークスピアやワーグナーよりも、カフェ・コンセールや流行歌を好み、パリのフォリー・ベルジェールをはじめ、サンクトペテルブルク、ローマ、コート・ダジュールのキャバレー・クラブで活躍しました。また、彼女には優れた簿記の才能もありました。

同性愛の関係

プジーは、作家ナタリー・クリフォード・バーネイと同性愛の関係にありました。この関係は、プジー自身が1901年に出版した小説『Idylle Saphique』に描かれています。1899年、バーネイはプジーの住まいに小姓の衣装で現れ、自身を「愛の小姓」と名乗り、プジーを魅了しました。二人はその後、生涯にわたり深い愛情を抱き続けたと言われています。

結婚と宗教への傾倒

1920年、プジーはワラキア公ギカ家の末裔・ゲオルゲ・ギカ（Gheorghe Ghika）と結婚し、「プランセス（プリンセス）・ギカ」となりました。18年の結婚生活の中で、一時、夫が家を空けることもありましたが、最終的には元に戻りました。しかし、息子マルクの戦死はプジーを深く悲しませ、宗教にのめり込むきっかけとなりました。1928年、夫と共にサヴォイに向かう途中で聖アグネス養護園を目にしたことをきっかけに、先天性疾患を持つ子供たちのケアに献身するようになりました。

その後の人生と死

リアーヌ・ド・プジーは、スイス・ローザンヌで生涯を閉じました。彼女の生涯は、波乱に満ちたものでしたが、常に自分の信じる道を進み、多くの人々に影響を与えました。彼女は、芸術と社交界の中心で輝き、愛と欲望、悲劇と再生を経験した女性でした。彼女の物語は、今もなお多くの人々の関心を集め続けています。

彼女の人生は、ジャン・シャロン著『高級娼婦 リアーヌ・ド・プージィ』（小早川捷子訳、作品社、1999年）で詳しく語られています。

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