リオネル・ブランギエ

リオネル・ブランギエ（Lionel Bringuier）は、1986年にフランスのニースで誕生した現代を代表する指揮者の一人です。

音楽に囲まれた環境で育つ

リオネル・ブランギエは、ピアニストの兄ニコラ・ブランギエを含む音楽家一家の第四子として生まれました。幼少期から音楽の才能を示し、5歳で地元のニース地方音楽院に入学すると、チェロ演奏で数々の一等賞を獲得するなど、その才能は早くから認められました。2000年2月、13歳でパリ国立高等音楽・舞踊学校に進学し、チェロの研鑽を積む傍ら、指揮者としての道を志し、同校で指揮法を学び始めました。指揮科ではゾルト・ナギらに師事し、指導を受けました。2004年6月には、チェロと指揮の両分野で優秀な成績を収め、ディプロマを取得して学校を卒業しました。また、兄であるニコラとは、チェロとピアノによるデュオとしても演奏活動を行っています。

国際的なキャリアの幕開け

学生時代から注目を集めていたブランギエは、卒業後すぐにプロフェッショナルとしてのキャリアを本格的にスタートさせます。2005年には、フランスの名門オーケストラ、パリ管弦楽団のアシスタント・コンダクターに就任しました。同年、若手指揮者の登竜門として知られる第49回ブザンソン国際音楽祭指揮部門で見事優勝を果たし、国際的な評価を確立しました。その後、2007年にはブルターニュ管弦楽団の副指揮者に就任するなど、フランス国内でも重要なポストを経験します。

アメリカでの成功と主要ポスト

ブランギエの活躍の場はフランス国内にとどまらず、アメリカにも広がります。2007年には、当時ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督であったエサ＝ペッカ・サロネンの指名を受けて、同楽団の副指揮者に就任しました。サロネンの後任としてグスターボ・ドゥダメルが音楽監督に就任してからも、彼は副指揮者として留任し、さらには楽団史上初となるレジデント・コンダクターへと昇進しました。ロサンゼルス・フィルにおいて、彼はその若さと才能あふれる指揮で聴衆を魅了しましたが、2012-2013年シーズンをもって同楽団を退任しました。

スペイン、スイスでの音楽監督・首席指揮者としての活動

ロサンゼルス・フィルでの活動と並行して、ブランギエは2009年から2012年にかけて、スペインのカスティーリャ・イ・レオン交響楽団で音楽監督を務めました。また、ヨーロッパ有数のオーケストラであるチューリッヒ・トンハレ管弦楽団への客演も重ね、2011年11月に初登場した後、2012年6月にも再び指揮台に立ちました。これらの客演が認められ、2012年10月には、チューリッヒ・トンハレ管弦楽団から2014-2015年シーズンからの次期首席指揮者兼音楽監督への就任が発表されました。当初の契約期間は4年間でしたが、2016年8月には、現在の契約が終了する2017-2018年シーズンをもって、トンハレ管弦楽団での任期を終えることがアナウンスされました。

その他の活動と録音

国際的に活躍を続ける中、ブランギエは世界各地のオーケストラに客演しています。日本においては、2021年に東京文化会館での宮本亞門演出によるオペラ『魔笛』を指揮する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症に関連する渡航制限とそれに伴う隔離期間の都合により、残念ながら来日が叶わず、指揮は代役が務めることとなりました。

録音活動も積極的に行っており、ブルターニュ管弦楽団との共演によるヴァンサン・ダンディの作品集（ティンパニ・レコード）や、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団とのカミーユ・サン＝サーンスの作品集（エラト・レーベル）など、いくつかの商業録音をリリースしています。若くして輝かしいキャリアを築き、世界中の主要オーケストラと共演するリオネル・ブランギエは、現代クラシック音楽界においてその存在感を高めています。

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