リガ湾の戦い

リガ湾の戦い：第一次世界大戦におけるバルト海の激戦

リガ湾の戦いは、1915年8月にバルト海のリガ湾で発生した、ドイツ帝国の大洋艦隊とロシア帝国のバルチック艦隊との間の海戦です。この戦いは、第一次世界大戦の東部戦線における重要な局面の一つであり、ドイツ軍はリガ湾の制海権を確立し、リガを陥落させることを目指しました。しかし、ロシア軍の抵抗と予期せぬ出来事により、ドイツ軍の作戦は完全には成功しませんでした。

戦いの背景

1915年8月上旬、ドイツ帝国の大洋艦隊はバルト海に展開し、リガ湾への進攻作戦に参加しました。この作戦の主な目的は、ロシア艦隊を撃破し、リガ湾への機雷封鎖を完了させ、最終的にはドイツ軍を上陸させることでした。ドイツ海軍は、フランツ・フォン・ヒッパー提督の指揮下、ナッサウ級戦艦4隻、ヘルゴラント級戦艦4隻、巡洋戦艦モルトケ、フォン・デア・タン、ザイドリッツといった強力な艦隊を投入しました。

戦闘の経過

最初の攻撃

8月8日、ドイツ軍はリガ湾への最初の攻撃を試みました。前弩級戦艦ブラウンシュヴァイクとエルザスが、ロシアの前弩級戦艦スラヴァを牽制し、掃海艇が機雷原の通路を切り開きました。しかし、日没が迫り、機雷敷設艦ドイッチュラントがスール海峡の入り口への機雷敷設を完了できなかったため、作戦は中断されました。同時に、ドイツの装甲巡洋艦ローンとプリンツ・ハインリヒは、サーレマー島の南にあるロシア軍陣地を砲撃し、ロシアの駆逐艦に損害を与えました。

二度目の侵入

8月16日、ドイツ軍は二度目のリガ湾侵入を試みました。弩級戦艦ナッサウとポーゼン、軽巡洋艦4隻、魚雷艇31隻が湾の防御を突破しました。8月17日には、ナッサウとポーゼンがスラヴァと交戦し、スラヴァに3発の命中弾を与え撤退させました。その後、ロシア軍の機雷原が除去されたことで、ドイツ艦隊は8月19日に湾内に入りましたが、連合軍の潜水艦の存在が報告されたため、翌日に湾から撤退しました。

モルトケの被雷と撤退

作戦中、ドイツの戦艦はバルト海に留まり、リガ湾への攻撃を支援しました。8月19日の朝、巡洋戦艦モルトケがイギリスの潜水艦E1による魚雷攻撃を受けました。この攻撃でモルトケは深刻な損傷を受け、修理のためにハンブルクに送られました。

8月20日、ドイツ軍はペルナウへの上陸を試みましたが、ロシア軍の小型艦艇に撃退されました。さらに、ロシアの砲艦シヴーチがドイツの軽巡洋艦アウクスブルクと駆逐艦との交戦で撃沈され、ドイツの掃海艇アルバトロスが損傷し、中立国であるスウェーデンに退避しました。

戦闘に参加した主な艦艇

ロシア帝国

戦艦: スラヴァ
装甲巡洋艦: リューリク
砲艦: 4隻
機雷敷設艦: 1隻
駆逐艦: 16隻

ドイツ帝国

戦艦: ナッサウ、ポーゼン、ブラウンシュヴァイク、エルザス
巡洋戦艦: モルトケ、ザイドリッツ、フォン・デア・タン
軽巡洋艦: アウクスブルク、ブレーメン、グラウデンツ、ピラウ
装甲巡洋艦: ローン、プリンツ・ハインリヒ
駆逐艦: 56隻
* 掃海艇: 14隻

戦いの結果

リガ湾の戦いは、ドイツ軍がリガ湾の制海権を確立し、リガを陥落させるという当初の目的を達成できませんでした。ドイツ艦隊は、ロシア艦隊の抵抗、機雷原、そして連合軍潜水艦の存在により、作戦を断念せざるを得ませんでした。リガは1917年までロシアの支配下にあり、その後ドイツ軍によって陥落しました。

この海戦は、第一次世界大戦における海戦の複雑さと、海軍力の重要性を如実に示す事例となりました。

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