リキ・スポーツパレス

リキ・スポーツパレス：力道山が夢見た殿堂の栄光と終焉

リキ・スポーツパレス、通称リキパレスは、かつて東京・渋谷に存在した総合スポーツレジャービルでした。特筆すべきは、日本初のプロレス興行常設会場を擁していたことです。力道山が自らの事業として建設・運営し、一時代を築きました。

建設の背景

力道山は、明治座社長であった新田新作から日本橋浪花町（現日本橋富沢町）の土地を提供され、そこを道場「力道山道場」、後に「日本プロレス・センター」として日本プロレスの拠点としていました。しかし、プロレス・センターは収容人数が限られており、力道山は相撲の国技館のような常設会場を夢見ていました。

常設会場があれば、定期的な興行開催が可能となり、会場レンタルの手間やトラブルも軽減できます。折しもプロレスセンターが土地収用の対象となったため、渋谷に新たな土地を確保し、ビルを建設することになりました。

完成とその概要

1960年に着工し、当時の金額で15億円という巨額を投じて1961年にリキ・スポーツパレスは完成しました。力道山が想い出の地であるハワイ州ホノルル・シビック・オーデトリアムを模して建造されたホールは、ビルの3階から5階部分までの吹き抜け構造で、最大3,000人を収容可能でした。

1961年7月30日のお披露目会には、美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの「三人娘」をはじめとする多くのスターが来場し、夢の殿堂と称されました。8月19日の日本プロレス興行がこけら落としとなり、3,000人を超える観客で満員となりました。以降、「三菱ダイヤモンドアワー・プロレスリング中継」も主にこの会場から中継され、プロレスだけでなくボクシング興行も開催されました。

リキパレスは、プロレス会場や道場、事務所だけでなく、サウナ、ボウリング場、キャバレー、花嫁学校、レストラン、ボクシングジム、女性専用スポーツジムなど、多角的な事業を展開する複合ビルでした。これは、「ビルに客を呼び込み、プロレスを観戦して帰ってもらう」という力道山の斬新な発想によるものでした。

力道山死後とリキパレスの終焉

しかし、リキパレス完成からわずか2年後の1963年、力道山は不慮の死を遂げます。リキパレスの経営を含む力道山の事業は、借金に依存していた部分が大きく、遺族が引き継いだリキ・エンタープライズは、すぐに経営難に陥りました。

ボウリングブームの終焉やレストランの不振も重なり、リキパレスは担保として西山興業の手に渡ります。その後、近畿観光株式会社に売却されキャバレー「エムパイア」として運営されましたが、立地条件の悪さやキャバレー業態の衰退により、1976年に恵通企業（現ヒューマックス）に売却されました。

跡地は渋谷ジョイシネマを経て、1992年に取り壊され、現在はヒューマックス渋谷ビルが建っています。リキ・エンタープライズは、力道山の遺品管理を行う個人事務所として存続しています。

リキ・スポーツパレスは、力道山の夢と野望が詰まった場所でしたが、彼の死後、時代の流れとともにその姿を消しました。しかし、日本プロレス史における重要な存在として、その名は今も語り継がれています。

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