リクライニングシート

リクライニングシートについて

リクライニングシートは、背もたれが後方に傾斜できる椅子であり、主に交通機関において快適な移動を実現するために開発されました。この座席は、19世紀中頃にアメリカで生まれ、当初は中距離の列車の優等車両「パーラーカー」や「チェアカー」で利用されるようになりました。日本では1960年頃から、高速バスの夜行便に導入され、現在では多くの交通手段で一般的に使用されています。

使用例と種類

リクライニングシートは、鉄道だけでなく、自動車や航空機、船舶においても普遍的に採り入れられています。航空機のビジネスクラスやファーストクラスでは、ほぼフラットになる座席もあり、快適な旅行をサポートします。また、足を伸ばせるフットレストやオットマンを備えたものも多く見られます。日本において本格的に導入されたスロ60形客車は、背もたれの角度を5段階に調整可能な機械式でした。

リクライニングシートは、他の分野でも見受けられます。例えば、歯科医院で使用される治療用椅子、介護用の椅子やベッド、理容院や美容院で使われる理容椅子、さらにはプラネタリウムやオムニマックスの劇場用の座席などがあります。特に日本では、タカラベルモントが1921年からリクライニング機能付きの理容椅子を製造しています。

操作と機構

リクライニングシートの操作は、通常脇にあるレバーやボタン、ダイヤルによって行われます。レバー式のモデルではレバーを引き、ボタンを押しながら背もたれに圧をかけることで倒すことができます。逆に、背中を離すと元の位置に戻る仕組みです。ダイヤル式のものでは、ダイヤルを回転させて好みの角度に調整します。

近年では、油圧シリンダーを用いたリクライニングシートが主流となり、多くの交通機関で見られます。電動式のシートも普及し、特に治療椅子や理容椅子で一般的です。モーター技術の進歩により、航空機の高級クラスや高級自動車でもコンパクトな動力機構が採用されています。

利用時のトラブル

リクライニングシートが前後に並ぶ配置の場合、後方の乗客が前席の背もたれに配慮せず急に倒すことで、後部座席のスペースが圧迫され、トラブルが発生することがあります。特にアメリカでは過去に急降下の原因となる事件も報告されています。

また、リクライニングを防ぐ器具「ニー・ディフェンダー」が販売されていますが、多くの航空会社ではこの使用を禁止しています。日本でも、夜行バスにおいて後席への配慮からリクライニングに関するアナウンスを行う例が増えています。例えば、特定の運転手が客に一斉に倒すように指示し、その取り組みが話題になることもありました。鉄道でも、快適な座席配置とともに後席への影響を考慮する取り組みが進んでいます。

このようにリクライニングシートは、利用者に快適な体験を提供する一方、座席同士のトラブルを避ける工夫が逐次求められています。

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