リグナン

リグナン：植物由来の健康成分

リグナンは、植物界に広く分布する多様な化合物群です。その生理活性から、近年注目を集める植物性エストロゲンの一種であり、抗酸化作用も持ち合わせています。他の植物性エストロゲンとして、イソフラボンやクメスタンなどが知られています。

リグナンの生成と種類

リグナンの主要な構成要素は、フェニルアラニンというアミノ酸から生合成されます。まず、フェニルアラニンからモノリグノールと呼ばれる物質が作られ、これが2分子結合することでジベンジルブタン骨格を持つリグナンが生成されます。この反応は、酸化酵素によって触媒され、特定のタンパク質によって制御されていると考えられています。

リグナンは、その化学構造によって様々な種類に分類されます。代表的な分類として、真正リグナンとネオリグナンがあります。真正リグナンは、モノリグノールの側鎖部分が特定の位置で結合した構造を持つのに対し、ネオリグナンはそれ以外の結合様式を持つリグナンです。さらに、3分子または4分子のモノリグノールが結合したセスキリグナンやジリグナンなども存在します。

リグナンの例と代謝

ピノレシノール、ポドフィロトキシン、ステガナシンなどは、代表的なリグナンの例です。これらのうち、一部のリグナンは、ヒトが摂取すると腸内細菌によって代謝され、エンテロジオールやエンテロラクトンなどのほ乳類リグナンに変換されます。

食事から摂取される主要なリグナンとしては、ピノレシノール、ラリシレシノール、セコイソラリシレシノール、マタイレシノール、ヒドロキシマタイレシノール、シリンガレシノール、セサミン、アルクチゲニンなどが挙げられます。これらは、様々な植物性食品中に含まれています。

リグナンを多く含む食品

リグナンの主要な供給源として、ゴマや亜麻仁（フラックスシード）が広く知られています。特に亜麻仁には、セコイソラリシレシノールジグルコシドというリグナン前駆体が豊富に含まれています。

その他にも、穀物類（ライ麦、小麦、オート麦、大麦）、カボチャの種、大豆、ブロッコリー、豆類、チョウセンゴミシなどの果実などにもリグナンは含まれています。

これらの食品におけるリグナンの種類や含有量は様々ですが、一般的にラリシレシノールとピノレシノールが全体の約75％を占め、セコイソラリシレシノールとマタイレシノールが約25％を占める傾向があります。ただし、シリンガレシノールやヒドロキシマタイレシノールの含有量については、分析方法の限界から正確な数値は得られていません。

近年の研究と今後の展望

近年の研究では、食品中に含まれるリグナン前駆体の複雑性が明らかになりつつあります。様々な植物種から多様なリグナンが発見されており、それらの健康への影響についても、更なる研究が期待されています。リグナンの生理作用、特に抗酸化作用やエストロゲン様作用については、更なる解明が必要ですが、健康増進に寄与する可能性のある成分として注目されています。

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