リシャール1世 (ノルマンディー公)

リシャール1世の生涯

リシャール1世（933年8月28日 - 996年11月20日）は、ノルマンディー公として知られ、その治世は942年から996年に及びました。「無怖公（Sans-Peur）」とも呼ばれる彼は、ノルマンディー公国の基礎を築いた重要な人物です。サン＝カンタンのデュドンがリシャール1世の依頼で書いた『ノルマンディー公の歴史』では、リシャール1世は「Dux」と呼ばれており、これは公爵としての地位だけでなく、戦場での彼の強力な指導力も示唆していると考えられています。

生誕と幼少期

リシャール1世は、ノルマンディーの支配者であったギヨーム1世と、ブルトン人のスプロタの間に生まれました。スプロタは、ギヨーム1世の側室であり、リシャールはロロの孫にあたります。942年にギヨーム1世が暗殺された時、リシャールは10歳前後でした。父ギヨーム1世は、息子の誕生をヴァイキングの反乱鎮圧後に知りましたが、リシャールの存在はしばらくの間、秘匿されていました。その後、ギヨーム1世はリシャールを後継者として公表し、バイユーで育てることになります。父の死後、母スプロタは再婚し、ラウル・ド・イヴリーを産みました。

公位継承と苦難

父ギヨーム1世の死後、西フランク王ルイ4世はノルマンディー公領を占領し、リシャールをポンティユー伯の管理下に置きました。その後、ルイ4世は公領を分割し、リシャールを幽閉しましたが、リシャールはオスモン・ド・サントルヴィルらの助けで脱出に成功します。946年、リシャールはユーグ大公に従うことを余儀なくされましたが、14歳になるとノルマン人の族長と同盟を結び、ルイ4世の軍をルーアンから追い出し、947年までにノルマンディーを取り戻しました。

治世と政策

962年、ブロワ伯ティボー1世がルーアンに侵攻しようとしましたが、リシャールの軍によって撃退されました。リシャールは、西フランク王ロテールによる介入もあり、領土拡大よりも国内の安定に重点を置きました。彼はノルマンディーの安定化とノルマン人同士の結束を強め、公国を西フランクで最も強力な国家へと成長させました。リシャールは、婚姻政策を積極的に行い、自身はユーグ大公の娘エマと結婚し、カペー家とのつながりを深めました。また、再婚相手のグンノールとの結婚は、敵対していたヴァイキング一族との同盟をもたらし、公国の忠実な家臣団の形成に貢献しました。さらに、娘たちの結婚はイングランド王家や近隣の領主との同盟を強化しました。リシャールは教会との関係も良好に保ち、大修道院を保護しました。彼の治世は、ノルマンディーの平和と安定の時代であったと言えるでしょう。

死去

リシャール1世は、996年11月20日にフェカンで病死しました。

結婚と子女

リシャール1世は、960年にパリ伯ユーグの娘エマと結婚しましたが、彼女との間に子供はいませんでした。エマの死後、リシャールはグンノールを妾とし、後に結婚しました。グンノールはヴァイキングの血を引く女性で、彼女との間に多くの子をもうけました。嫡子にはリシャール2世（ノルマンディー公）、ロベール2世（ルーアン大司教）、モージェ（コルベイユ伯）などがいます。また、娘のエマはイングランド王エゼルレッド2世と結婚し、後にクヌート1世とも再婚しました。他にも、マティルドはブロワ伯ウード2世と、アヴォワーズはブルターニュ公ジョフロワ1世と結婚しました。

リシャール1世には、庶子も多く、ジョフロワ（ウー伯）、ギヨーム1世（ウー伯）、ベアトリス（モンヴィリエー女子修道院長）などが知られています。また、ミュリエル、フレデゼンド、グィマラ・ウィマルシュなどもリシャールの子女である可能性があります。


リシャール1世は、その治世を通じてノルマンディー公国の基礎を築き、後の歴史に大きな影響を与えた人物です。

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