ユーグ大公

ユーグ大公：カロリング朝末期の権力者、カペー朝への道を開く

ユーグ大公（898年頃 - 956年）は、カロリング朝末期の西フランク王国において、ロベール家の勢力を確立した重要な人物です。父は西フランク王ロベール1世、伯父には先々代の王ウードがいます。彼はパリ伯、ネウストリア辺境侯、そしてフランス公といった要職を歴任し、広大な領地と影響力を手中に収めました。

生涯

ユーグ大公は、父ロベール1世とヴェルマンドワ伯エルベール1世の娘ベアトリスとの間にパリで生まれました。923年に父がシャルル3世との戦いで命を落とすと、彼はその遺志を継ぎ、勝利を収めました。

936年、義兄であるラウール王が崩御すると、ユーグ大公はロワール川とセーヌ川に挟まれた地域において、圧倒的な権力を握るようになりました。王位を継承する機会もありましたが、彼はあえてシャルル3世の二の舞を避けるため、諸侯を説得し、イングランドに亡命していたシャルルの遺児ルイを新たな王として迎えました。

しかし、翌年にザクセンのヘートヴィヒと結婚してからは、ルイ4世との対立が深まりました。ユーグ大公は、ルイに対抗するため、神聖ローマ皇帝オットー大帝に臣従の礼を取りました。

945年、ルイ4世がノルマン人との戦いで捕らえられると、ユーグ大公はルイをブロワ伯ティボーに預け、オットー大帝の許可を得て釈放しました。その交換条件として、ピカルディ地方のランを手に入れました。ルイ4世との確執は、953年まで続きました。

954年にルイ4世が亡くなると、ユーグ大公はルイの息子ロテールを王位に就けました。その代償として、ブルゴーニュとアキテーヌの支配権を獲得しました。その後は、若いロテールを後見し、956年6月にドゥールダンで生涯を閉じました。

ユーグ大公の死後、彼の長男ユーグ・カペーが987年にフランス王位に就き、カペー朝を開くことになります。

家族

ユーグ大公は、数多くの女性と関係を持ち、多くの子をもうけました。

ディジョン伯ラウルの娘レインガルド・ド・ディジョンとの間に庶子エルベール（オセール司教）
922年、メーヌ伯ロジェの娘ジュディットと結婚（死別）
926年、イングランド王エドワード長兄王の娘エディルドと結婚（死別）
937年、ローマ王ハインリヒ1世の娘エドヴィジュと結婚
ベアトリス（上ロレーヌ公フレデリック1世と結婚）
ユーグ・カペー（フランス王）
エマ（ノルマンディー公リシャール1世と結婚）
オトン（ブルゴーニュ公）
ウード＝アンリ（ブルゴーニュ公）

ユーグ大公は、その政治力と戦略によって、カロリング朝末期のフランスにおいて絶大な権力を築き上げました。彼の功績は、長男ユーグ・カペーによるカペー朝の創始へと繋がり、フランスの歴史に大きな影響を与えました。

参考文献

樺山紘一ほか 『世界歴史大系 フランス史1』、山川出版社、1995
Detlev Schwennicke, Europäische Stammtafeln
Elizabeth M. Hallam, Capetian France; 987-1328, Longman Group Ltd., London & New York, 1980
Pierre Riché, The Carolingians; A Family who Forged Europe
The Annals of Flodoard of Reims; 919-966
Jim Bradbury, The Capetians: Kings of France, 987-1328
Olivier Guillot, Albert Rigaudière, Yves Sassier, Pouvoirs et institutions dans la France médiévale, tome I : Des origines à l'époque féodale, Armand Colin, 2003

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