リジェ・JS19

リジェJS19：1982年シーズンの挑戦と進化

1982年、リジェチームはF1世界選手権に新たなマシン、リジェJS19を投入しました。このマシンは、F1ドライバーを引退したばかりのジャン＝ピエール・ジャブイーユの技術指導の下、ミッシェル・ポイジョンによって設計されました。パワートレインには、タルボのバッジネームを冠したマトラ製MS81 V12エンジンを搭載。

JS19の最大の特徴は、革新的な空力設計です。リヤサスペンションリンケージを覆うように延長されたサイドポンツーンと、その全長にわたって設置されたサイドスカートが目を引きます。この設計は、グラウンド効果を最大限に発揮し、高いダウンフォースとグリップを確保することを目指したものでした。サイドスカートは、車体底部を後方へと流れる空気を遮断することなくスムーズに流し、空気の流れを制御することでマシンへのダウンフォースを最大限に高めることを意図した設計です。

しかし、JS19の開発とシーズンは、容易ではありませんでした。当初、JS17およびJS17Bでシーズンを戦っていたリジェチームは、第6戦モナコGPからJS19を投入しました。しかし、車検において、後輪センターライン後方のサイドスカート部分がレギュレーション違反とみなされ、取り除くよう指示されました。これにより、JS19は設計段階で想定していたダウンフォースを得ることができなくなり、チームはレギュレーションの曖昧さを指摘して抗議しましたが、認められませんでした。

この事態を受け、リジェチームはJS19の設計を再考する必要に迫られました。第7戦デトロイトGPと第8戦カナダGPは、旧型のJS17Bで参戦せざるを得ませんでした。その間、JS19は徹底的な風洞実験を繰り返し、サイドスカートを短縮した状態でも十分なヴェンチュリ効果を得られるよう、改良が加えられました。しかし、時間的な制約から、再設計されたJS19は1台しか完成しませんでした。

この1台は、第9戦オランダGPで実戦投入されましたが、予選でチーバーがクラッシュ。マシンは大破し、修復が間に合わず予選落ちという結果に終わりました。2台目の改良型JS19は第10戦イギリスGPでラフィットがドライブしましたが、予選20位からのスタートも、決勝ではギアボックストラブルによりリタイアを喫しました。

第11戦フランスGPからようやく2台のJS19体制が整いましたが、ギアボックスの信頼性という新たな課題が浮上しました。そのため、安定した好成績を残すことは困難でした。しかし、第13戦オーストリアGPでラフィットが3位表彰台を獲得、そして最終戦ラスベガスGPではチーバーが、予選4位グリッドからスタートして見事3位表彰台を獲得しました。このチーバーの3位入賞は、JS19にとってシーズン最後の輝きとなりました。

シーズンを通してJS19が獲得したポイントは9ポイント。チーム全体での獲得ポイントは20ポイントとなり、コンストラクターズランキングでは8位という結果に終わりました。JS19は、革新的な空力設計と開発における数々の困難を象徴するマシンとして、F1の歴史にその名を刻みました。その挑戦と進化の物語は、多くのF1ファンに語り継がれることでしょう。

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