リジェ・JS21

リジェ JS21：空力と革新の狭間で

1983年、リジェチームはF1世界選手権に新たなマシン、JS21を投入しました。前年まで使用していたエンジン供給元であるマトラが撤退したため、チームはコスワースDFVエンジンを使用せざるを得ない状況にありました。当時、ターボエンジンが台頭し始める中、自然吸気エンジンのDFVエンジンを搭載するJS21は、ターボ勢に対抗するために徹底的な空力性能の向上を目指しました。

その結果、JS21は非常に特徴的なデザインとなりました。サイドポンツーンは、当時話題を呼んでいたブラバムBT52の「アロウシェイプ」をさらに極端に小型化し、リヤタイヤ前に斜めに配置されたラジエターを除けば、サイドパネルはほぼ存在しないという、特異な形状となっています。この大胆な設計は、ターボチャージャーに関連する機器の搭載スペースが不要になったことによって実現可能となりました。

JS21の開発コンセプトは、当時新しく導入されたフラットボトム規定に対する、極めて挑戦的なアプローチでした。しかしながら、この革新的な設計は、必ずしも成功に結びつくわけではありませんでした。マシンの空力特性は予想通りではなかったようで、JS21はレースにおいて目立った結果を残すことができませんでした。最高成績は7位に終わり、シーズンを通してチームは1ポイントも獲得することができず、F1参戦開始以来初の無得点シーズンとなってしまいました。

シャシー設計に加えて、JS21はサスペンションシステムにも注目すべき点がありました。JS21には、シトロエン製のハイドロニューマチックサスペンションが採用されました。このシステムは、油圧を利用してサスペンションの動きを制御するもので、高い乗り心地と路面追従性を実現する可能性を秘めていました。しかしながら、この革新的なサスペンションシステムも、JS21の戦闘力を向上させるには至りませんでした。

ドライバーラインナップは、ジャン＝ピエール・ジャリエとラウル・ボーセルという強力なコンビが起用されました。しかし、彼らをもってしても、JS21の潜在能力を最大限に引き出すことはできませんでした。マシンのパフォーマンス不足が、ドライバーの力量を大きく阻害したと言えるでしょう。

結局、JS21は空力性能とサスペンションシステムの革新的な試みにもかかわらず、期待通りの結果を残すことができなかったマシンとなってしまいました。この経験は、リジェチームにとって貴重な教訓となり、後のマシン開発に活かされていったことでしょう。JS21は、成功とはならなかったものの、F1の歴史において、挑戦的な設計と革新技術への探求を象徴するマシンとして記憶されています。その特異なデザインは、F1マシンの進化における一つの重要なステップを示す、象徴的な存在と言えるでしょう。

もう一度検索