リジェ・JS29

リジェ・JS29について

リジェ・JS29（Ligier JS29）は、1987年にF1（フォーミュラ・ワン）に参戦したリジェチームのフォーミュラカーです。この車両は、デザイナーであるミッシェル・テツとミッシェル・ポイジョンによって設計されました。JS29の最高成績は6位であり、シーズンを通じてさまざまな困難に直面しながらもレースを続けました。

開発の背景

当初、JS29は新型のアルファロメオ415T 4気筒ツインターボエンジンを搭載する予定でした。ツインターボは、この年度からの過給圧規制に対応するために必要と考えられていましたが、準備には時間がかかりました。そのため、開幕戦のブラジルGPではアルファ・ロメオ890T V8エンジンを暫定的に使用する計画が立てられました。アルファロメオは、リジェにエンジンを供給する条件として、イタリアンドライバーのピエルカルロ・ギンザーニを起用することを求めました。

JS29はミッシェル・テツにとってリジェでの3作目であり、そのデザインには独特な特徴がありました。フロントサスペンションのダンパー配置がドライバーの膝上にあり、プッシュロッドを使っており、当時は珍しい構造でした。さらに、マシンのカラーは濃いフレンチ・ブルーで美しい仕上がりになっていました。サイドポンツーンは左側をターボチャージャーの冷却、右側をエンジン全体の冷却に分ける構造でした。

開幕戦に向けて、リジェチームはテスト走行を重ねましたが、ブラジル合同テストに参加したルネ・アルヌーはエンジン性能に不満を抱いていました。アルヌーは、アルファロメオのエンジンチームに対し「最低のエンジンだ」と厳しい意見を述べ、これがアルファロメオの親会社フィアットに波紋を呼び、リジェとのプロジェクトから撤退する口実となりました。

シーズンの流れ

リジェは、開幕戦を欠場せざるを得なくなり、新たなエンジンを確保すべく動き出しました。元々はF1から撤退していたBMWから、アメリカ資本のメガトロン直4ターボエンジンを買い入れました。新たに搭載したマシンはJS29Bと名付けられ、シャシーの改良を行いながらシーズンを戦いました。

第2戦のサンマリノGPでは、アルヌーは予選21位で通過しましたが、決勝前にトラブルが発生し、レースに出走できませんでした。その後のベルギーGPでは、JS29Bで6位に入賞し、リジェにとって貴重な1ポイントを獲得しました。しかし、メガトロンエンジンは燃費と信頼性に問題を抱えており、エンジントラブルが続く厳しい状況となりました。

JS29BはデトロイトGPを最後に実戦使用が終了し、その後はJS29Cにアップデートされました。JS29Cでは冷却システムなどが大幅に改良されましたが、ギ・リジェはエンジンの性能に不満を募らせていました。特にイタリアGPでは新しいデファレンシャルギアの投入が影響し、レースではまずまずの結果を出しながらも、エンジンの不調を痛感しました。

最終戦オーストラリアGPでは、再びエンジントラブルに見舞われ、リジェのグランプリ参戦は終了しました。1988年には、JS29Cに代わって新車のJS31が投入されましたが、JS29は多くの試練に晒された一台として記憶されています。

総括

リジェ・JS29は、F1の激動のシーズンにおいて多くの課題と向き合いながら、チームとしての成長や挑戦を象徴した車両でした。アルファエンジンの問題や、メガトロンエンジンへの不安定な信頼性など、様々な困難を乗り越えて、レーシングカーとしての限界に挑む姿は、多くのファンに感動を与えました。

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