リスボン議定書

リスボン議定書：旧ソ連核兵器の行方

1991年、アメリカ合衆国とソ連の間で第一次戦略兵器削減条約（START I）が締結されました。しかし、同年12月にソ連が崩壊したことで、条約の履行には新たな課題が生じました。ソ連が保有していた核兵器の多くはロシア領内にありましたが、一部はベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンにも配備されていたのです。

背景：ソ連崩壊と核兵器の行方

ソ連崩壊後、核兵器の管理は喫緊の課題となりました。ソ連の核兵器を引き継いだこれらの国々は、核兵器の管理、処分、核拡散防止という複雑な問題に直面しました。START Iは、ソ連の後継国家であるロシアが、他の旧ソ連構成国が核兵器を廃棄するかロシアの管理下に置くことを条件に批准が可能となるものでした。

この状況を受け、アメリカとロシアは、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンに対し、核兵器の廃棄またはロシアへの移管を求める外交圧力を強めました。

議定書の調印と執行

1992年5月23日、ポルトガルのリスボンで、アメリカ合衆国、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンの代表がリスボン議定書に調印しました。この議定書では、4か国全てが核拡散防止条約（NPT）に参加し、旧ソ連の核兵器をロシアの管理下に置く、または廃棄することが合意されました。

しかし、議定書は調印されたものの、各国の批准と執行には時間がかかりました。特にベラルーシとウクライナでは、核兵器の放棄に対する国内の抵抗がありました。しかし、最終的には、各国が議定書を批准し、合意が実行に移されることになりました。

カザフスタン: カザフスタン政府は、核兵器の維持よりも国家発展のための資源活用に関心を抱いていました。アメリカとロシアからの安全保障、軍事援助、金融支援、補償を条件に、1995年5月までに全ての核兵器をロシアに移管しました。

ベラルーシとウクライナ: 当初、両国は核抑止力や外交上の切り札として核兵器を保持したいという意向がありました。しかし、ベラルーシは経済的にロシアに依存しており、最終的に核兵器の移管に同意しました。ウクライナも同様に、アメリカとロシアからの安全保障、軍事援助、金融支援、補償を条件に核兵器を放棄しました。

1996年末までにベラルーシとウクライナが核兵器をロシアに移管したことで、リスボン議定書は完全に執行されました。

議定書の影響と意義

リスボン議定書は、旧ソ連の核兵器管理における重要な一歩でした。この議定書によって、核兵器の拡散が防がれ、国際的な核不拡散体制が強化されました。また、この合意は、核兵器の削減と軍縮に向けた努力を加速させることにも貢献しました。

関連事項

ソビエト連邦の崩壊
核拡散防止条約
第一次戦略兵器削減条約
核兵器とウクライナ

参照

* (関連資料へのリンクや参考文献があれば記載)

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