リタス

リタス：リトアニアの旧通貨

リタス（Litas, Lt）は、リトアニアの通貨として1922年から2014年まで使用されていた旧通貨です。補助通貨単位はツェンタス（centas）で、1リタス＝100ツェンタスでした。リタスの名称は、リトアニアの国名に由来しています。

旧リタス（1922年-1941年）

第一次世界大戦後のリトアニア独立宣言（1922年）を受けて導入されました。当初は、1リタス＝100分の1の金に裏付けられた安定した通貨として高い評価を得ていました。世界恐慌の影響も比較的受けずに、リトアニア経済の安定に貢献しました。しかし、1940年にソビエト連邦に併合されると、ソビエト・ルーブルに切り替えられ、リタスは廃止されました。この際、為替レート操作により、ソ連政府関係者が不当に利益を得た一方、国民は資産を大幅に損失しました。

旧リタスの硬貨と紙幣

旧リタスの硬貨は、1925年から発行され、1、2、5、10、20、50ツェンタス、および1、2、5、10リタスなどの額面がありました。著名な人物の肖像がデザインされていました。紙幣も同様、複数の額面が発行されましたが、5リタス以下の額面は後に硬貨に切り替えられました。

新リタス（1993年-2014年）

ソ連崩壊後、1993年6月25日にリタスは再びリトアニアの通貨として復活しました。暫定通貨タロナスからの移行では、1リタス＝100タロナスというレートが適用されました。しかし、その導入過程は容易ではありませんでした。

リタス導入までの道のり

リトアニア政府は、リタスの再導入に向け、長年にわたる準備を進めていました。紙幣や硬貨のデザイン案の作成、外国企業との印刷契約交渉、為替準備金の確保など、多くの困難がありました。特に為替準備金に関しては、戦前に海外に預けられていた金準備の回収に時間を要しました。国際機関からの融資も得ましたが、目標額には届かず、財政的な不安も残りました。

リタスの導入と課題

新リタスの導入当初は、紙幣の品質問題や、タロナスからの交換における不正行為なども発生しました。当初の紙幣デザインは偽造されやすく、商店では偽札対策として紫外線ランプが必需品となりました。また、タロナスからリタスへの交換は無制限に認められたことが、犯罪組織の資金洗浄を招く結果となりました。

ペッグ制とユーロへの移行

1994年から2002年までは、リタスは米ドルにペッグされ、為替レートの安定が図られました。その後、2002年からはユーロにペッグされ、事実上ユーロ圏に組み込まれました。しかし、ユーロ導入のための収斂基準を満たすのに時間を要し、導入は2015年1月1日となりました。

新リタスの硬貨と紙幣

新リタスの硬貨は1993年に、紙幣は1991年に発行開始されましたが、デザインの粗末さからすぐに新版が発行されました。その後も何度かデザインや技術が変更されながら発行が続けられました。

ユーロへの移行

2015年1月1日、リタスはユーロに切り替えられ、リトアニアはユーロ圏に加盟しました。これにより、リタスは歴史の幕を閉じました。

リトアニア語表記

リトアニア語では、リタスの語尾変化が複雑で、数字の1の位の数によって語尾が変化します。例えば、「リタス」は、1の位が1の場合（11を除く）、「リタイ」は2～9の場合（12～19を除く）、「リトゥ」は0または11～19の場合に使用されます。ツェンタスも同様の語尾変化をします。

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