リダ・バーロヴァ

リダ・バーロヴァ：波乱に満ちた映画女優の人生

リダ・バーロヴァ（本名：ルドミラ・バブコヴァ）は、1914年9月7日に生まれたチェコの女優である。彼女は映画界での華々しい成功と同時に、ナチス・ドイツの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスとの恋愛関係が引き起こしたスキャンダルで知られている。バーロヴァはチェコスロヴァキアとドイツ両国で数多くの映画作品に出演し、第二次世界大戦前の時代において一世を風靡した。

彼女の母親も女優であり、映画界に自ずと足を踏み入れることとなった。バーロヴァはプラハ音楽院で演技を学び、17歳で映画デビューを果たした。その才能が認められ、彼女はドイツの映画スタジオにスカウトされてベルリンに移住し、瞬く間に人気女優として名を馳せていく。ハリウッドからのオファーもあったが、彼女はそれを断った。

バーロヴァは俳優のグスタフ・フレーリッヒと恋愛関係にあり、二人はベルリン郊外に同棲を始めた。その住居はゲッベルスの別荘からごく近い場所にあり、後に彼女とゲッベルスとの関係が始まる。1935年、バーロヴァは撮影所見学の際にアドルフ・ヒトラーとゲッベルスに出会い、その後、彼女とゲッベルスは移行を重ね、1936年からは彼女がゲッベルスの愛人になった。フレーリッヒとの婚約は解消され、ゲッベルスとの真剣な関係が始まったが、これはドイツ社会に波紋を広げることになる。

この不倫関係は、ゲッベルスの妻マクダやヒトラーの耳にも入った。ゲッベルス夫妻は「ナチ体制の理想的家族」として公に宣伝されていたため、ヒトラーは夫妻の離婚を認めることを拒否した。このため、ゲッベルスはやむを得ずバーロヴァとの関係を断ち切ることとなる。

この事件が公に知られたことにより、バーロヴァの名声は一時的に失墜した。特に、親衛隊全国指導者のハインリヒ・ヒムラーはこのスキャンダルを利用してゲッベルスの影響力を削ごうと画策した。ヒムラーの命令で、バーロヴァが主演する映画の上映を妨害する活動が展開された。その結果、バーロヴァは映画会社との契約を解除され、故郷のプラハへ戻らざるを得なくなった。また、映画界復帰の機会があったものの、マクダ・ゲッベルスの妨害に遭い、再度の映画界への道が閉ざされてしまう。

1942年、バーロヴァはイタリアに移住し、コメディやメロドラマに出演しながら新たな役割を目指したが、1943年には再びプラハに戻ることとなる。戦闘が激化する中、ゲッベルスは彼女の写真を見入る姿が目撃され、彼の心の内にバーロヴァの存在が未だに深く刻まれていたことが伺える。

第二次世界大戦後、バーロヴァは対独協力者として一時拘束されたが、その後、オーストリアに逃れた。そして、映画界への復帰を試みるが、厳しい現実に直面することになる。その後、アルゼンチンに移住し、また映画の道を模索するものの、悲劇的な状況で夫と離婚することになり、最終的にはイタリアに行くことを決意した。イタリアではフェデリコ・フェリーニ監督の『青春群像 I Vitelloni』に出演し、1955年にスペインに移住した。1957年からはオーストリアや西ドイツで演劇活動を再開し、彼女の芸能活動は再び活発になった。

リダ・バーロヴァの人生は、映画界における華やかな成功と、ナチス時代における個人的な葛藤の物語であった。彼女の存在は、戦争の中で起きた人間ドラマや歴史の裏側を反映した一例であり、その影響は現在でも語り継がれている。

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