リチアーノ・ハプス

リチアーノ・ハプス（Ridgeciano Haps）は、1993年6月12日にオランダのユトレヒトで生まれた、スリナム代表のプロサッカー選手です。主なポジションはディフェンダー、特に左サイドバックを務めており、現在はイタリアのヴェネツィアFCに所属しています。

彼のフットボールキャリアは、ユトレヒト地元のアマチュアクラブ、Zwaluwen Vooruitで始まりました。幼少期からその才能は注目を集め、わずか数ヶ月のうちにオランダの二大クラブであるフェイエノールトとアヤックスのスカウトの目に留まりました。両クラブの練習に参加した後、ハプス自身の希望はフェイエノールトにありましたが、クラブ側の獲得の申し出がなかったため、アヤックスのユースアカデミーに入団することになりました。しかし、10歳になった時、当時のアヤックスの育成責任者だったダニー・ブリントから「次のカテゴリーに進むには力量が足りない」と直接告げられ、アヤックスを退団せざるを得なくなりました。ハプスは後に、この時の辛い経験こそが、その後のキャリアを通じて彼の強いモチベーションの源泉となったと語っており、「10歳でとても辛かったし、もうあんな経験はしたくないんだ」とその時の心境を振り返っています。

アヤックス退団後、ユトレヒトのアマチュアクラブ、Elinkwijkへ移籍しプレーを続けました。Elinkwijkでの活躍が再びAZのスカウトの目に留まり、AZのユースへと加入します。AZでは、当初フォワードとしてプレーしていた彼に対し、クラブ側は左サイドバックへのコンバートを提案しました。ハプスはこの提案に当初抵抗を感じ、一年間はAFCでプレーすることを選択しました。しかし、AZとの対戦でフォワードとして3ゴールを挙げる活躍を見せたことがきっかけとなり、AZからの復帰要請に応じる形で再びAZに戻ることになりました。この時もフォワードとしてAZとプロ契約を結びましたが、トップチームへの昇格に際し、ヘルトヤン・フェルベーク監督の下で正式に左サイドバックへとポジションを移すことになったのです。自身も左サイドバックとしてすぐに順応できた手応えを感じ、当初からこの新しい役割を楽しめたと振り返っており、コンバートを決断したフェルベーク監督に感謝の意を示しています。

プロデビューは2013年9月28日、AZの一員としてエールディヴィジのPSV戦に途中出場して果たしました。また、同年12月12日にはUEFAヨーロッパリーグのPAOK戦で国際舞台にも立ちました。しかし、冬の移籍期間中にチームメイトのシモン・ポウルセンが復帰したことで出場機会の減少が見込まれたため、より多くの出場時間を求めてゴー・アヘッド・イーグルスへレンタル移籍し、エールディヴィジで10試合に出場しました。

2015-16シーズンからはAZに戻り、チームの主要メンバーとしての地位を確立します。2016年1月にはクラブとの契約を2019年まで延長。特に2016-17シーズンの前半戦では、顕著な成長を遂げ、持ち前の圧倒的なスピードと強靭なフィジカルを活かした推進力を武器に目覚ましい活躍を見せました。当時の監督ジョン・ファン・デン・ブロムは代表選出に値すると評価し、著名な識者からは「オランダ最高の左サイドバック」と称賛されるほどでしたが、シーズン後半はやや調子を落としました。

2017年夏、テレンス・コンゴロの移籍に伴い左サイドバックの補強を目指していたフェイエノールトからオファーを受け、同年7月18日に移籍が決定しました。フェイエノールトとは5年契約を結び、移籍金は約600万ユーロと報じられ、これは当時のフェイエノールトにとってクラブ史上2番目に高額な移籍金でした。フェイエノールトでは、2017-18シーズンのKNVBカップ優勝、そして2017年と2018年のヨハン・クライフ・スハール（スーパーカップ）獲得に貢献しました。

2021年9月1日には、イタリア・セリエA（当時）のヴェネツィアFCへの移籍を発表し、新たな挑戦の舞台をセリエAへと移しました。

代表キャリアとしては、オランダではなくスリナム代表を選択。2021年6月4日に行われたバミューダ諸島代表戦で、スリナム代表としての初キャップを記録しました。

幼い頃の挫折を乗り越え、ポジション転換というキャリアの岐路を経て、オランダ国内のトップクラブで活躍し、国際舞台やイタリアのリーグへと活躍の場を広げている選手です。

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