リチャード・グローヴナー (初代グローヴナー伯爵)

初代グローヴナー伯爵リチャード・グローヴナー：政治と競馬に生きた大富豪

初代グローヴナー伯爵リチャード・グローヴナー（1731年6月18日 - 1802年8月5日）は、グレートブリテン王国の政治家、貴族であり、18世紀後半のイギリス社会において、その名を知られた人物でした。

生い立ちと政界での活躍

1731年、第6代準男爵サー・ロバート・グローヴナーの息子として生まれたリチャード・グローヴナーは、オックスフォード大学で学び、学位を取得後、1754年にシティ・オブ・チェスター選挙区から出馬し、イギリス総選挙で当選を果たし政界入りしました。父の死後、準男爵位を継承し、議会では当初トーリー党に所属していましたが、後に大ピット（ウィリアム・ピット）を支持し、政権を支えました。1761年にはグレートブリテン貴族に叙され、グローヴナー男爵となり、貴族院の一員となりました。

政治家としてのグローヴナーは、時代の流れに応じて支持する勢力を変えましたが、常に国の政治に関与し続けました。アメリカ独立戦争では戦争遂行を支持し、東インド法案には反対するなど、自身の信念に基づいて行動しました。晩年には、政界における影響力を息子ロバートに委ねました。

競馬への情熱

グローヴナー伯爵は、莫大な資産を競馬に惜しみなく注ぎ込みました。その額は20万から30万ポンドとも言われ、当時の競馬界においては、イグリモント伯爵と並ぶほどの存在でした。彼は多くの競走馬を所有し、自ら生産も行いました。所有馬の中には、ジムクラックやマンブリーノといった名馬も含まれており、数々のレースで勝利を収めました。

1761年に爵位を授かった際、儀式を欠席してニューマーケット競馬場に調教を見に行っていたという逸話からも、彼の競馬への情熱が窺えます。また、高額な賭けにも参加し、時には資金不足に陥ることもあったようですが、その度に周囲の助けを得てレースを実現させました。

生産者としての功績

グローヴナー伯爵は、競走馬の生産にも力を注ぎました。ロンドンのハイド・パークやケンブリッジ州ベルシャムのオクスクロフト牧場、そして本拠地であるチェシャー州イートンにイートン牧場を開設し、英国を代表する競走馬生産牧場として知られるようになりました。彼の牧場からは、数々の名馬が輩出され、競馬界に大きな影響を与えました。

種牡馬としては、グローヴナーズアラビアンやジムクラック、マンブリーノ、スイートブライアーなどが繋養され、多くの産駒を送り出しました。特にポテイトーズは、種牡馬として大成功を収め、生涯で172頭の勝ち馬を輩出しました。

私生活と晩年

1764年、ヘンリエッタ・ヴァーノンと結婚し、4人の息子をもうけましたが、そのうち3人は早世しました。ヘンリエッタとの結婚生活は、不倫問題により破綻し、後に別居しました。グローヴナー伯爵は、文学のパトロンとしても知られ、ウィリアム・ギフォードを支援しました。1802年8月5日、アールズ・コートで死去し、チェシャーのエクルズトンに埋葬されました。爵位は息子のロバートが継承しました。

初代グローヴナー伯爵リチャード・グローヴナーは、政治家として、そして競馬界の大物として、18世紀のイギリス社会に大きな足跡を残しました。彼の生涯は、富と権力、そして情熱が交錯する、波瀾万丈なものでした。

競馬に情熱を注ぎ込んだ初代グローヴナー伯爵。
彼の存在は、現代競馬にもその名を残しています。

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