リチャード・フランシス・トレビシック

リチャード・フランシス・トレビシック

リチャード・フランシス・トレビシック（Richard Francis Trevithick, 1845年 - 1913年）は、19世紀から20世紀にかけて活躍したイギリス出身の鉄道技術者です。彼は、世界初の高圧蒸気機関車や軌上を走る蒸気機関車を発明したとされる高名なリチャード・トレビシック（Richard Trevithick, 1771-1833）を祖父に持つ技術者一家の出身であり、祖父の長男で機関車「コーンウォール号」の設計者としても知られるフランシス・T.トレビシック（Francis Trevithick, 1812-1877）の子にあたります。

日本への渡航に先立つ1888年以前、リチャード・フランシス・トレビシックはセイロン国鉄（現在のスリランカ鉄道）において汽車監察方という役職に就いていました。当時の汽車監察方とは、鉄道車両、特に機関車の設計、製造、検査、維持管理などを統括する重要な技術職でした。

1888年、彼は日本政府のお雇い外国人として招聘され、日本の鉄道発展に貢献することとなります。来日後、トレビシックは主に官設鉄道の神戸工場に勤務し、汽車監察方としての職務に従事しました。彼の日本での勤務期間は1904年までにおよび、その間、日本の鉄道技術の基礎確立において中心的な役割を果たしました。

神戸工場における彼の最も特筆すべき功績の一つは、日本で初めて設計・製造された国産蒸気機関車である860形の製作指導です。この機関車は、日本の鉄道が輸入機関車に依存していた時代において、国内での機関車製造能力を確立する上での画期的な存在となりました。トレビシックは、この860形に続き、その後もいくつかの独特な設計思想を持つ蒸気機関車の製作を指揮し、日本の機関車技術の多様化と向上に寄与しました。

また、リチャード・フランシス・トレビシックにはフランシス・ヘンリー・トレビシックという弟がいました。彼もまた兄と同じく鉄道技術者であり、兄よりも早い1876年に既に来日していました。弟フランシス・ヘンリーは、官設鉄道の新橋工場などで汽車監察方を含む要職を歴任しており、兄リチャード・フランシスと共に日本の鉄道黎明期を技術面から支えました。トレビシック兄弟は、それぞれが日本の主要な鉄道工場において指導的立場に立つことで、日本の機関車技術水準を引き上げ、国内での製造・保守技術を定着させる上で、計り知れない貢献を果たしたのです。

彼の指導によって製造された機関車や、彼が導入した技術・知見は、その後の日本の鉄道車両技術の発展に大きな影響を与えました。リチャード・フランシス・トレビシックは、祖父が世界の鉄道史に名を刻んだように、日本の鉄道史においても忘れられない重要な人物の一人として記憶されています。

関連項目

日本の鉄道開業
日本の鉄道史
鉄道作業局神戸工場
860形蒸気機関車

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