リチャード・ヘル

リチャード・ヘル: パンク・ロックの先駆者

リチャード・ヘル（Richard Hell、1949年10月2日生まれ）は、アメリカ合衆国ケンタッキー州レキシントン出身のロック・ミュージシャン、作家、俳優です。本名はリチャード・レスター・マイヤーズ。彼はその音楽スタイルと独特のルックスにより、パンクロックシーンに計り知れない影響を与えました。

生い立ちと初期の経歴

ヘルは心理学者の家庭に生まれますが、7歳のときに父親を亡くしました。高校時代、彼はトム・ヴァーレインと出会い、共に学校を中退します。この一時期には、アラバマで犯罪歴があることも知られています。1969年にニューヨークへ移ると、ヴァーレイン、ビリー・フィッカと共にネオン・ボーイズを結成しました。

この頃、ヘルは詩人志望であり、初めて楽器（ベース）を手にします。彼の外見や音楽には、19世紀のフランス詩人アルチュール・ランボーからの影響が見られ、名前の「Hell」も彼の詩作に由来しています。

ネオン・ボーイズは活動を一旦停止しますが、1973年には新たにリチャード・ロイドを加え、テレヴィジョンを結成。しかし、音楽スタイルの違いからヘルは1975年にこのバンドを脱退します。その後、ジョニー・サンダースとジェリー・ノーランと共にハートブレイカーズを結成。しかし、このバンドでもサンダースとの間に諍いが生じ、結成からわずか1ヶ月で再び脱退しました。

リチャード・ヘル&ヴォイドイズの結成

1976年、ヘルはついに自ら主導のバンド、リチャード・ヘル&ヴォイドイズを結成します。このバンドにはロバート・クワイン、アイヴァン・ジュリアン、マーク・ベルが参加し、同年にはEPをリリースしました。1977年には彼の代表作であるアルバム『ブランク・ジェネレーション』が発表され、高く評価されました。このアルバムの表題曲は、彼の音楽キャリアの象徴ともなりました。

しかし、ベルの脱退やヘル自身のドラッグ問題が影響し、活動は停滞。この頃からイギリスのパブロックの巨匠ニック・ロウをプロデューサーに迎えようとしましたが、アルバム完成には至らなかったものの、いくつかのEPをリリースしました。1982年に出た2作目『ディスティニー・ストリート』は、既にパンクブームの終焉を迎えたため商業的成功は収められませんでした。

音楽から文筆業へ

1984年、ヘルは初のソロアルバム『R.I.P』を発表し、本格的な音楽活動からは距離を置きました。その後、彼は文筆活動やポエトリー・リーディング、俳優業と多岐にわたって活躍します。その一方で、1992年には音楽界に復帰し、ソニック・ユースのメンバーと共にディム・スターズを結成しました。

影響と功績

リチャード・ヘルのスタイルは、独特の短く逆立った髪型や破れたメッセージシャツによって広まり、イギリスの音楽シーンでも影響を与えました。このスタイルは、セックス・ピストルズに受け継がれたとも言われています。また、ヘルが名付けた「腐った」や「意地悪い」といった名前も、彼の影響が色濃く残っています。

彼自身の演奏力や歌唱力には限界がありましたが、焦燥感あふれる歌詞と個性的な歌声で多くの支持を得ました。彼の音楽は、パンクロック全体のイメージに大きく貢献したのです。彼の残した作品や活動は、今なお多くのミュージシャンに影響を与え続けています。

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