リチャード・ローズ

リチャード・ローズ（Richard Rhodes, 1937年7月4日 - ）は、アメリカ合衆国の作家、ジャーナリストです。彼の著作は多岐にわたり、特に核兵器開発史に関するものが知られています。代表作である『原子爆弾の誕生』は、ピューリッツァー賞を受賞し、彼の名を広く知らしめました。

生い立ちと青少年期

ローズは1937年、カンザス州カンザスシティで生まれました。幼少期は不幸なもので、1歳の時に母親が自殺し、父親と兄弟と共に暮らしました。父親が再婚した後、継母から虐待を受け、餓死寸前の生活を送ることもありました。13歳の時、兄と共に警察に保護を求め、その後はミズーリ州インディペンデンス市の養護施設で青年期を過ごしました。この辛い経験は、自伝『A Hole in the World』（1990年）で詳細に語られています。

大学とキャリア

奨学金を得てイェール大学に進学し、1959年に卒業しました。その後、カンザスシティを拠点に雑誌記事の執筆を開始し、ノンフィクション作家としてのキャリアをスタートさせました。彼は20冊以上の著書を出版しており、その中でも核兵器開発史に関する著作は、科学と政治の交錯を描いたものとして高く評価されています。

『原子爆弾の誕生』とヴェリティー

1986年に出版された『原子爆弾の誕生』（The Making of the Atomic Bomb）は、彼の代表作であり、ピューリッツァー賞を受賞しました。この作品は、1930年代の核分裂の発見から、マンハッタン計画、そして広島・長崎への原子爆弾投下までを詳細に描いています。科学者、政治家、軍人、そして被爆者の証言を基に、多角的な視点から原子爆弾の誕生を描き出しています。

ローズは、自身の作品を単なるノンフィクションではなく、「ヴェリティー (verity)」と呼ぶことを提唱しています。ヴェリティーとは、「真実」「陳述の真実性」を意味し、彼の作品が単なる事実の羅列ではなく、真実を追求するものであることを示しています。

核開発史に関する他の著作

『原子爆弾の誕生』に続き、1995年には『原爆から水爆へ』（Dark Sun）を出版しました。この作品では、ソ連の原爆開発、水素爆弾開発を巡る議論、そしてオッペンハイマーの失脚などを描いています。また、2007年には『Arsenals of Folly』（愚かさの備蓄）、2010年には『The Twilight of the Bombs』（爆弾の黄昏）を出版し、冷戦期の核軍拡競争とその終焉、そしてポスト冷戦期の核開発問題を扱いました。

その他の著作

ローズは、核開発史以外にも、アメリカの農家の生活を描いた『アメリカ農家の12カ月』（Farm）、自身の性体験を元にした『メイキング・ラヴ』（Making Love）、プリオン病の謎を追った『死の病原体プリオン』（Deadly Feasts）など、多様なテーマの作品を執筆しています。また、自伝『A Hole in the World』では、自身の辛い少年時代を赤裸々に語っています。

評価と影響

リチャード・ローズの著作は、詳細な調査と冷静な分析に基づいており、科学、政治、社会に対する深い洞察を提供しています。彼の作品は、核兵器の歴史や暴力の問題、人間の心理など、様々なテーマについて考えさせられるものであり、多くの読者に影響を与え続けています。

現在、ローズは夫人と共にカリフォルニア州に在住しています。

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