リディア・コーベット

リディア・コーベット：ピカソのミューズから芸術家へ

リディア・コーベット、旧名シルヴェット・ダヴィットは、パブロ・ピカソの「シルヴェット」シリーズ、特に「ポニーテールの少女」として知られる絵画のモデルを務めたフランスの芸術家です。彼女の人生は、ピカソとの出会いを機に大きく変化し、その後、自らも芸術家としての道を歩み始めました。

若年期

リディア・コーベットは、パリでフランス人の父親とイギリス人の母親の間に生まれました。父親は美術商のエマニュエル・ダヴィット、母親は油彩画家のHonor Gell。両親の婚姻関係は彼女の誕生後に破綻し、幼少期のほとんどを父親不在の中で過ごしました。

ピカソとの出会い

1954年春、19歳だったリディアはパブロ・ピカソと出会いました。当時、ピカソのアトリエは南フランスのヴァロリスにあり、彼女は婚約者に会いに行く際、そのアトリエの前をよく通っていました。ある日、彼女が友人とコーヒーを飲んでいると、ピカソが彼女の肖像画を掲げているのを見つけます。それは、ピカソが記憶を頼りに描いた彼女の絵でした。

「まるで招待状のようでした」と彼女は回想します。彼女と友人はピカソのアトリエを訪ね、ピカソは彼女を歓迎し、すぐに彼女の絵を描きたいと申し出ました。こうして、リディアはピカソのモデルを務めることになったのです。

「シルヴェット」シリーズ

1954年4月から6月にかけて、ピカソはリディアをモデルに、デッサン、彫刻、そして28点もの絵画を含む60点以上の作品を制作しました。これらの作品は「シルヴェット」シリーズとして知られ、発表されると評論家から高い評価を受けました。ライフ誌は、このシリーズをピカソ芸術の「ポニーテール時代」の到来として紹介しました。また、ブリジット・バルドーがリディアのスタイルに影響を受け、ポニーテールを取り入れたという逸話も残っています。

芸術家としてのキャリア

ピカソのモデルを務める間、リディアはロッキングチェアに座ってポーズをとることが多く、その時間を利用して自らも絵を描き始めました。その後結婚し、1968年にイギリスに移住。画家としての名声に頼ることを避けるため、結婚後の名前で作品にサインをしました。

40代から本格的に絵を描き始め、油絵と水彩の両方を用い、1989年からはフランシスカイルギャラリーの代表を務めています。1991年には日本で作品展が開催され、1993年にはピカソとリディアに関するドキュメンタリー映画がBBC2で放映されました。この映画は、テート・ギャラリーで開催されたピカソの絵画展と同時に公開され、大きな話題を呼びました。

2014年には、ロンドンのフランシスカイルギャラリーで80歳の誕生日を記念した展覧会が開催されました。現在、リディアのアトリエはイングランド南西部のデヴォンにあります。

リディア・コーベットは、ピカソのミューズとしてだけでなく、一人の芸術家として独自の道を切り開いてきました。彼女の作品は、彼女自身の内面世界と、自然や人々とのつながりを反映しており、多くの人々を魅了し続けています。

外部リンク

* 公式ウェブサイト

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