リトル・ウィリー・ジョン

ウィリアム・エドワード・「リトル・ウィリー」・ジョン（William Edward "Little Willie" John, 1937年 11月15日 - 1968年 5月26日）は、アメリカのR&B歌手です。わずか30歳で世を去るまで、約10年の活動期間に「オール・アラウンド・ザ・ワールド」「フィーヴァー」「トーク・トゥ・ミー、トーク・トゥ・ミー」といった多数のヒット曲を生み出しました。ソウルシンガーのメイブル・ジョンは彼の姉です。短いキャリアながら、彼はR&Bチャートに17曲を送り込み、うち10曲がポップチャートでも成功を収めるなど、音楽史に確かな足跡を残しました。

波乱の生涯

幼少期からプロデビュー

1937年、アーカンソー州カレンデールに生まれたジョンは、音楽好きな母を持つ大家族で育ちました。4歳の時に父の仕事の関係で一家はデトロイトへ移住。10代でゴスペルグループに参加し、後に兄弟と自身のグループを結成します。タレントショー出演がきっかけでプロデューサーのジョニー・オーティスに見出されますが、若すぎたためすぐには契約できませんでした。しかし、地元レーベルからシングルをリリース後、ポール・ウィリアムス楽団で歌っていたところをキング・レコードのヘンリー・グローヴァーの目に留まり、1955年にキングと契約を結びました。

キング・レコードでの成功と挫折

小柄な体格から「リトル・ウィリー」のニックネームで親しまれた彼は、キングでのデビューシングル「オール・アラウンド・ザ・ワールド」がR&Bチャート5位のヒットを記録。続く「ニード・ユア・ラヴ・ソー・バッド」も成功を収め、1956年には最大のヒット曲となる「フィーヴァー」がR&Bチャート1位、ポップチャート24位を記録しました。その後も「トーク・トゥ・ミー、トーク・トゥ・ミー」などがヒット。私生活では結婚し子供も設けましたが、短気な性格やアルコール問題によるトラブルが絶えず、1963年にはデビュー以来所属したキング・レコードとの契約を解除されてしまいます。

事件と収監

1964年10月、シアトル滞在中にバーでの口論が原因で男性をナイフで刺し、死なせてしまう事件を起こしました。逮捕後、当初は正当防衛を主張し保釈されてツアーを続けますが、1965年の裁判で過失致死罪となり、懲役8年から20年の判決を受けます。判決確定前に再び保釈されキャピトル・レコードで録音を行いましたが、キングとの契約問題からそのリリースは長らく保留となりました（2008年にようやく発売）。1966年7月、刑務所に収監されます。獄中でもトラブルを起こしつつ、音楽活動は続け、ジェイムズ・ブラウンらが面会に訪れました。

悲劇的な最期

刑務所内で肺炎を発症した彼は、1968年 5月26日に30歳で亡くなりました。公式な死因は心臓発作ですが、獄中での環境や適切な医療処置への疑問も指摘されています。ジェイムズ・ブラウンは彼の死を悼み、追悼アルバムを制作しました。彼の墓はミシガン州ウォーレンにあります。

後世への影響と評価

リトル・ウィリー・ジョンは、その短いキャリアながら音楽史において重要な存在と見なされています。ロックの殿堂（1996年）、リズム・アンド・ブルースの殿堂（2014年、2016年）、ミシガン・ロックンロール・レジェンドの殿堂（2016年）、ブルースの殿堂（2022年）と、複数の殿堂入りを果たしています。彼の楽曲は多くのアーティストにカバーされており、「Need Your Love So Bad」はフリートウッド・マックやゲイリー・ムーア、「Fever」はペギー・リーやマドンナ、「Talk To Me, Talk To Me」はアレサ・フランクリンなどがそれぞれ独自の解釈で演奏し、世代を超えて愛されています。彼の魂のこもった歌声は、今なお多くのリスナーに影響を与え続けています。

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