リトル・ドリット

チャールズ・ディケンズによる小説『リトル・ドリット』は、1855年から1857年にかけて月刊連載された作品です。舞台はロンドンのマーシャルシー債務者監獄。ここでは、借金返済の困難から家族ごと投獄されている人々が暮らしています。主人公は、監獄で生まれ育ったエイミー・ドリット、愛称リトル・ドリットです。彼女は、監獄という閉鎖的な環境で、貧困と理不尽な状況に直面しながらも、たくましく生きています。

エイミーの父、ウィリアム・ドリットは、監獄で長年を過ごし「マーシャルシーの父」と呼ばれています。彼は、最古参の囚人としての地位を利用し、他の囚人から金をたかり、生活しています。エイミーには、放蕩癖のある兄エドワードと、踊り子として働いている姉ファニーがいます。貧困に苦しむ一家ですが、エイミーは自尊心を失わず、針子として働き家計を支えています。

物語には、アーサー・クレナムという重要な人物が登場します。彼は、中国で20年間過ごした後、故郷に戻ってきた青年です。母親であるクレナム夫人の厳格な教育を受けて育った彼は、生真面目で引っ込み思案な性格をしています。彼は、ドリット一家が、自分の父によって負債を負わされたのではないかと疑い始め、彼らの境遇に深く関わるようになります。

クレナムは、エイミーの誠実さと、監獄生活の中で培われた彼女の強さに心を奪われます。一方、エイミーもまた、クレナムの優しさに触れ、彼への恋心を抱くようになります。しかし、二人の愛は、貧困や社会的な偏見、そしてそれぞれの複雑な過去によって試されます。さらに、エイミーの姉ファニーに求愛するエドマンド・スパークラーや、クレナムが一時的に好意を抱いたペットことミニー・ミーグルスの存在も物語に複雑さを加えます。

物語が進むにつれ、ドリット家に隠された大きな財産の存在が明らかになります。この発見によって、ドリット一家は監獄から解放され、新たな人生を歩むことができるようになります。しかし、財産を得たことで、彼らを待ち受ける新たな試練や葛藤も描かれます。

『リトル・ドリット』は、貧困と監獄生活、家族の絆、愛と喪失、そして社会の不公平さをテーマに、複雑で魅力的な物語を展開します。ディケンズの卓越した描写力と、多様な登場人物たちの織りなす人間模様は、読者に深い感動と余韻を与えます。この作品は、小池滋氏、田辺洋子氏などによって翻訳されており、複数の日本語版が存在します。また、1913年、1920年、1934年、1988年には映画化され、2008年にはBBCによってテレビドラマ化もされました。BBC版は高い評価を受け、プライムタイム・エミー賞作品賞（ミニシリーズ部門）を受賞しています。

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