リトル・ネリー・ケリー

『リトル・ネリー・ケリー』（Little Nellie Kelly）は、1940年に公開されたアメリカ合衆国のミュージカル映画です。ノーマン・タウログが監督を務め、当時の人気スター、ジュディ・ガーランドとジョージ・マーフィが主演しました。本作は、1922年にジョージ・M・コーハンが制作した同名の舞台ミュージカルを基に映画化されたものです。

ストーリー

物語は、アイルランド出身の若き女性、ネリー・ヌーナン（ジュディ・ガーランド）の人生から始まります。ネリーは、愛情深いものの、どこか頑固で仕事には消極的な性格の父親マイケル（チャールズ・ウィニンガー）からの強い反対にもかかわらず、恋人ジェリー・ケリー（ジョージ・マーフィ）との結婚を貫きます。やがて三人は新天地を求めてアメリカへ渡ります。ジェリーはニューヨークで警察官の職を得ますが、娘の結婚が気に食わないマイケルは、頑なにジェリーと口を利こうとせず、両者の間には常に険悪な空気が漂います。

不幸にも、ネリーは出産時に命を落としてしまいます。残されたジェリーとマイケルは、依然として和解せぬまま、生まれた娘、リトル・ネリー・ケリーの子育てを始めることになります。娘は母親そっくりの魅力的な女性へと成長しますが（このリトル・ネリー・ケリー役もジュディ・ガーランドが演じます）、父親であるジェリーは警察署の隊長に昇進する一方で、祖父のマイケルは相変わらず定職に就かず、二人の間の溝は深まるばかりでした。孫のリトル・ネリーは、そんな父と祖父を何とか和解させようと心を砕きますが、状況はなかなか改善しません。

ある日、セントパトリックス・デーの盛大なパレードで、リトル・ネリーは同じアイルランド移民の家庭で育った青年、デニス・フォガティ（ダグラス・マクファイル）と出会い、すぐに恋に落ちます。しかし、娘の新しいロマンスを歓迎するジェリーに対し、マイケルはこれにも反対の姿勢を示し、父娘・祖父孫間の対立はさらに激化します。ついにマイケルは耐えきれなくなり、家を出て行ってしまいます。

しばらく行方不明になっていたマイケルですが、セントラルパークで御者として働いているところを孫娘のリトル・ネリーに見つけ出されます。そこにジェリーも駆けつけ、紆余曲折を経て、ついに三人は心を通わせ、長年のわだかまりを解くことになります。

主なキャスト

リトル・ネリー・ケリー／ネリー・ケリー(ヌーナン): ジュディ・ガーランド
ジェリー・ケリー: ジョージ・マーフィ
マイケル・ヌーナン: チャールズ・ウィニンガー
デニス・フォガティ: ダグラス・マクファイル

劇中歌

本作はミュージカル映画として、魅力的な楽曲が多数使用されています。ジュディ・ガーランドが歌唱する「A Pretty Girl Milking Her Cow」や「Singin’ in the Rain」、出演者一同で歌われる「It's a Great Day for the Irish」などがあります。

制作背景

本作の制作は、プロデューサーのアーサー・フリードとロジャー・イーデンスが、ジュディ・ガーランドの新たな一面を引き出したいと考えたことから始まりました。彼らはジョージ・M・コーハンのミュージカルに着目し、映画化を企画します。当時、子供の役が多かったジュディにとって、ネリーという大人の女性を演じることは大きな挑戦でした。しかし、MGMの首脳であるルイス・B・メイヤーは、ジュディを大人の役で起用することに当初は難色を示したといいます。「あのまだ幼いイメージの女優に、母親を演じさせるわけにはいかない」というのがその理由でした。それでも、物語の内容に興味を引かれたメイヤーは、最終的にこのキャスティングを承諾しました。

この映画は、ジュディ・ガーランドが演じる役柄が死亡する唯一の作品として知られています。母親ネリーが亡くなるシーンでのジュディの演技は非常に評価が高く、共演したジョージ・マーフィーは後に「あれほど素晴らしい演技は見たことがない」と絶賛しています。このシーンでの説得力ある演技は、MGM社内にあったジュディの大人の役への適性に関する疑問を払拭する決定的なものとなりました。また、娘リトル・ネリー・ケリーの成長を描く「ネリー・モンタージュ」のシークエンスでは、実際にジュディ・ガーランド自身の子供時代の写真を使用し、シーンに一層の真実味と感動を与えています。本作は、ジュディ・ガーランドの女優としての成長を示す重要な一歩となった作品と言えるでしょう。

もう一度検索