リバティーン

破滅への道を歩んだ天才詩人――映画『リバティーン』

映画『リバティーン』(2004年)は、17世紀イギリスの放蕩詩人として知られる第2代ロチェスター伯爵ジョン・ウィルモットの生涯を描いた伝記映画です。ジョン・マルコヴィッチの熱演が光る本作は、天才的な才能を持ちながらも、酒と享楽に溺れ、33歳の若さで夭逝した詩人の波乱に満ちた人生を、彼と愛人である女優エリザベス・バリーとの関係を中心に描き出しています。

奔放な時代と破滅への序曲

舞台は、王政復古後のイギリス。技術革新や芸術の隆盛といった社会の発展に伴い、性に対する考え方も変化しつつありました。自由主義的な風潮が吹き荒れる中、ロチェスターは、その才能と反骨精神、そして奔放な生き様で注目を集めます。しかし、その自由奔放な振る舞いは度々問題を引き起こし、国王チャールズ2世の怒りを買うこともしばしばありました。

物語は、国王主催の宴で卑猥な詩を朗読し、幽閉されたロチェスターが、恩赦を受けて再びロンドンに戻るところから始まります。酒と悪友に囲まれた彼の唯一の安らぎは、芝居小屋での観劇でした。そこで彼は、観客からブーイングを浴びる女優エリザベス・バリーと出会います。

才能と恋、そして破滅

ロチェスターは、バリーの隠れた才能を見抜き、個人指導を申し出ます。最初は警戒していたバリーも、ロチェスターの熱意に心を動かされ、彼の指導の下で才能を開花させ、『ハムレット』のオフィーリア役で喝采を浴びるまでになります。2人の間には次第に恋が芽生えていきますが、ロチェスターにはすでに妻のマレットと娼婦のジェーンという2人の女性がいました。

映画は、ロチェスターの破天荒な生き様を、彼自身の言葉「始めに断っておく。諸君は私を好きにならないだろう。男は嫉妬し、女は嫌悪し、物語が進むと同時にどんどん私を嫌いになる」から始まり、酒、女、そして詩に溺れる彼の姿を赤裸々に描写します。彼は自らを「改宗者」「信心深い放蕩者」と呼び、その矛盾した生き様を自ら認識しているかのようです。

複数の女性との関係と内面

ロチェスターを取り巻く女性たちは、それぞれ彼との関係を通して複雑な感情を抱いています。妻であるマレットは、彼の放蕩ぶりに苦悩し、一方、娼婦のジェーンは、梅毒に冒された彼を献身的に看病します。そして、バリーとの恋は、彼の人生に一筋の光をもたらすものの、同時に破滅への道を加速させることにもなります。

映画は、ロチェスターの才能と魅力、そして彼を滅ぼした傲慢さと破滅願望を、巧みに描き出しています。華麗な衣装や時代考証の細やかさ、そして俳優陣の演技も相まって、17世紀イギリスの華やかさと、その裏側に潜む暗黒面を鮮やかに映し出しています。観る者の心に、複雑で深い余韻を残す、忘れがたい作品と言えるでしょう。

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