リバティ百貨店

ロンドン、ウェストエンドのグレート・マルボロ・ストリートに位置するリバティは、1875年、アーサー・ラセンビィ・リバティによって創業した老舗百貨店です。当初は東洋の装飾品や織物を中心に販売していましたが、次第にアールヌーヴォー様式や1890年代の耽美主義を取り入れ、独自のスタイルを確立していきます。イタリアでは「スタイル・リバティ」として知られるほど、リバティの名前は美術様式と同一視されるようになりました。クリストファー・ドレッサーやE.W.ゴードウィンといったデザイナーの作品も取り扱い、ビクトリア時代の日本ブームを牽引した存在でもあります。

現在の建物は、1924年にエドウィン・T・ホールとその息子エドウィン・S・ホールによって設計されました。テューダー・リバイバル様式とアーツ＆クラフツ様式を融合した建築様式は、ロンドンを代表する建造物の一つとして、イギリスの第2種指定建造物に指定されています。興味深いことに、建物の木材はイギリス海軍の軍艦「インプレグナブル」と「ヒンダスタン」から流用されたものです。

店内も、当時の大型百貨店に見られた吊り天井や会社名が記された調度品とは異なり、テューダー・リバイバル風の装飾を維持しています。1930年代の手法が一部に取り入れられているものの、基本的には窓のないアトリウム（中央大広間）を囲むように比較的小さな部屋が配置され、ガラスの天井と木製のバルコニーから光を取り込む構造になっています。エスカレーターはなく、階段と装飾が施されたリフトが設置されているのも特徴的です。

リバティでは、最新の化粧品、装飾品、贈り物、ホームウェア、家具など、幅広い商品を販売しています。中でも、ショーウィンドー装飾は有名で、想像力豊かな、時に超現実的なディスプレイ、特にクリスマスのディスプレイは多くの人々を魅了しています。1988年には日本に卸売を行う子会社を設立し、グローバルな商品展開と日本のトレンドを融合させた商品を提供しています。

リバティは、単なる百貨店を超え、建築、デザイン、そして時代の美意識を凝縮した空間と言えるでしょう。創業から現在まで、時代を超えて人々を惹きつけてやまないその魅力は、洗練された商品と歴史的建造物の調和、そして独特の雰囲気にあります。その歴史と建築、そして洗練された商品群は、訪れる人々に忘れられない体験を提供し続けています。リバティの独特な世界観は、今後も多くの人々を魅了し続けることでしょう。

もう一度検索