リビドー

リビドーとは何か？精神分析学における性的欲動の概念を解説

リビドー（Libido）は、一般的には性的欲望や性衝動と同義に用いられる言葉です。しかし、精神分析学においては、より複雑で奥深い意味を持つ概念として扱われます。

フロイトとユングによる解釈の違い

リビドーの概念は、精神分析学の創始者であるジークムント・フロイトによって提唱されました。フロイトはリビドーを「性的衝動を発動させる力」と定義し、人間の心理エネルギーの根源であると考えました。一方、カール・グスタフ・ユングは、リビドーをより広義に捉え、すべての本能のエネルギーを指す言葉として用いました。

リビドーの源泉と変形

精神分析学では、リビドーはイド（無意識）を源泉とする心的エネルギーと定義されています。リビドーは、単に性的なものだけでなく、人間の性を多様な方向へ向かわせる本質的な力と考えられています。リビドーは自我によって防衛・中和されることで、社会に適応した行動へと変化することがあります。例えば、男根期の露出癖が名誉欲に変わったり、支配欲動が自己に向かい、厳格な超自我を形成して強い倫理観を獲得したりすることがあります。

文化、芸術、道徳との関係

フロイトは、人間のあらゆる活動はリビドーの変形であると理解しました。特に、文化的活動や人間の道徳的防衛は、リビドーが変形したもの、あるいはリビドーから身を守るために自我が無意識的に防衛したものとして捉えられます。芸術や科学の活動も、リビドーが自我によって防衛され、昇華された結果であると考えられています。

リビドーと関連する概念

リビドーの対義語としてデストルドーが挙げられることがありますが、これは正確ではありません。デストルドーは、フロイトが晩年に提唱した「タナトス（死の欲動）」の言い換えであり、リビドーの対義語としては、死の欲動または攻撃欲動がより適切です。また、リビドーは対象に向けられる欲動を指し、その反対の力として自我欲動が想定されることもあります。

まとめ

リビドーは、単なる性的欲求にとどまらず、人間の心理や行動、さらには文化や社会の形成に深く関わる重要な概念です。精神分析学におけるリビドーの理解を深めることは、人間という存在をより深く理解することにつながるでしょう。

関連項目

* デストルドー

もう一度検索