リピッツァナー

リピッツァナー：優雅さと歴史を誇る軽種馬

リピッツァナーは、16世紀のオーストリアで品種改良によって誕生した軽種馬です。日本では、かつてリピッツァナーを飼育していたリピッツァ牧場の名前から「リピッツァ」と呼ばれることもありますが、正式名称はリピッツァナーです。

リピッツァナーの特徴

リピッツァナーは、優れた身体能力と精神性を兼ね備えています。柔軟で強靭な体格、忍耐強く感受性豊かな穏やかな気性は、馬術競技に最適です。高い学習能力を活かし、乗馬から高度な馬場馬術まで、幅広い分野でその能力を発揮します。

遺伝的には灰毛ですが、生まれたばかりの頃は黒茶色や茶色、鼠色で、6歳から10歳頃に色が薄くなり、成馬になると主に白色になります。かつては白、黒、茶、栗、焦茶、白黒斑、白茶斑など様々な毛色の個体が存在しましたが、現在では白色の個体が主流となっています。

リピッツァナーの歴史

ルネサンス期の古典馬術再興以降、軍隊や乗馬学校では、優れた能力を持つ軽種馬が求められていました。当時、アンダルシア馬は強靭さと知性、美しい容姿から最適な乗用馬として高く評価されていました。

ハプスブルク家のマクシミリアン2世は1562年、アンダルシア馬を自領に持ち込み、ボヘミアのクラドルビに飼育場を設立しました。その後、マクシミリアン2世の弟であるカール2世は1580年、トリエステ近郊のリピッツァに同様の飼育場を設立し、そこでアンダルシア馬の流れを汲むカルスト種とネアポタリノ種を交配させることにより、リピッツァナーが誕生しました。

リピッツァナーは、戦時と平時を問わず活躍できる馬として、400年以上にわたる選抜育種を経てきました。17世紀から18世紀半ばにかけては世界最高の軍馬として評価され、スペイン乗馬学校における高等馬術でも重要な役割を果たしました。しかし、ハプスブルク家がオーストリア国外への輸出を制限したため、オーストリアの国力衰退とともに生産数は減少。やがて、トラケナーやサラブレッドなど他の馬種に取って代わられることとなりました。

ナポレオン戦争や第一次世界大戦、第二次世界大戦といった戦争の際には、リピッツァナーは幾度も避難を余儀なくされました。第二次世界大戦終戦後には、アメリカ軍によって救出されたものの、多くの個体がスペイン乗馬学校やイタリアの所有となりました。

リピッツァとリピッツァナーの現在

1580年以来、リピッツァの飼育場は世界最古の種馬飼育場として歴史を繋いできました。体系的な繁殖技術を持つ先駆的な飼育場の一つでもあり、現在も311ヘクタールの広大な敷地でリピッツァナーの育成を続けています。ユーゴスラビアへの返還後も、わずかな個体から飼育場を再興。乗馬訓練学校設立や一般への公開を経て、現在ではオリンピック馬術競技でも重要な品種となっています。

2022年には、オーストリアなど8カ国の推薦により、「リピッツァナーのブリーディングの伝統」がUNESCOの無形文化遺産に登録されました。これは、リピッツァナーの歴史と文化的な価値が世界的に認められたことを示しています。

まとめ

400年以上の歴史を持つリピッツァナーは、その優雅な姿と優れた能力、そして豊かな歴史が織りなす物語を通じて、人々を魅了し続けています。今後も、馬術競技や文化遺産として、世界中でその存在感を示し続けることでしょう。

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