リフュジーズ・オブ・ザ・ハート

『リフュジーズ・オブ・ザ・ハート』（Refugees of the Heart）は、イギリス出身のロック・ミュージシャン、スティーヴ・ウィンウッドが1990年に世に送り出した、ソロ名義としては6枚目のスタジオ・アルバムです。自身の代表作群と比較すると商業的な成功は限定的でしたが、長年の音楽パートナーとの協業や、特定の社会情勢にインスパイアされた楽曲など、興味深い背景を持つ作品となっています。

制作背景

本作の制作には、スティーヴ・ウィンウッドがかつて所属した伝説的なバンド、トラフィックの盟友であるジム・キャパルディが参加しています。これは前作『ロール・ウィズ・イット』（1988年）に続く共演であり、彼らの長年にわたる音楽的な結びつきを示しています。特にシングル曲として発表された「ワン・アンド・オンリー・マン」は、ウィンウッドとキャパルディの共作によるものです。ウィンウッド自身によれば、この曲はアルバム全体の完成が近づいた段階で、「何かが足りない」と感じたことから生まれたとのこと。アルバムのバランスを整えるために、よりリズミカルでアップテンポな楽曲が必要だと考え、わずか一日で書き上げられたエピソードは、彼らの創作意欲と手腕を物語っています。

また、収録曲の一つである「イン・ザ・ライト・オブ・ディ」は、作詞家ウィル・ジェニングスとの共作であり、南アフリカの反アパルトヘイト運動指導者ネルソン・マンデラが刑務所から釈放されたというニュースに触発されて生まれた楽曲です。社会的な出来事が作品に影響を与えた例として挙げられます。なお、スティーヴ・ウィンウッドとジム・キャパルディは、本作発表後の1994年にはトラフィックを再結成し、活動を行いました。

反響と評価

アルバム『リフュジーズ・オブ・ザ・ハート』は、チャートにおいては以前のソロ作品ほどの成功を収めることはできませんでした。母国イギリスでは、全英アルバムチャートに3週間ランクインしたものの、最高位は26位にとどまり、ウィンウッドのソロ名義のスタジオ・アルバムとしては初めて、全英トップ20圏内入りを逃す結果となりました。

一方、アメリカ合衆国では、1990年12月8日付のBillboard 200で最高27位を記録しました。これは、ベスト・アルバムを含めると、彼にとって通算7作目の全米トップ40入りアルバムとなりましたが、これも彼のアメリカでのキャリアにおけるヒット作群の中では比較的地味な成績と言えるでしょう。

批評家からの評価も分かれました。音楽レビューサイトAllMusicのウィリアム・ルールマンは、5点満点中2.5点という評価を与え、スティーヴ・ウィンウッドのソロ・キャリアにおいて、アルバム『スティーヴ・ウィンウッド』（1977年）や『トーキング・バック・トゥ・ザ・ナイト』（1982年）に続く「3度目の失敗作」と位置づけました。また、エンターテインメント・ウィークリー誌のデヴィッド・ブラウンは、1990年11月23日号のレビューでCマイナスという厳しい評価を下し、「前作『ロール・ウィズ・イット』に引き続き、退屈な白人のR&Bだ」と評しています。これらの評価は、本作が一部の批評家にとって期待外れであったことを示唆しています。

収録曲

本作には以下の8曲が収録されています。特記がない限り、作詞作曲はスティーヴ・ウィンウッドとウィル・ジェニングスによる共作です。

ユール・キープ・オブ・サーチング - "You'll Keep On Searching" – 6:21
エヴリディ（オー・ロード） - "Every Day (Oh Lord)" – 5:50
ワン・アンド・オンリー・マン - "One and Only Man" (Steve Winwood, Jim Capaldi) – 5:03
アイ・ウィル・ビィ・ヒア - "I Will Be Here" – 5:59
アナザー・ディール・ゴウズ・ダウン - "Another Deal Goes Down" – 4:58
ランニング・オン - "Running On" – 4:20
カム・アウト・アンド・ダンス - "Come Out and Dance" – 5:35
イン・ザ・ライト・オブ・ディ - "In the Light of Day" – 9:44

参加ミュージシャン

スティーヴ・ウィンウッド - ボーカル、キーボード、ハモンドオルガン、モーグ・シンセサイザー、キーボード・ベース、ギター、パーカッション、ヴィブラフォン・ソロ、プログラミング
ジム・キャパルディ - ドラムス (on #2, #3, #7)、パーカッション (on #3)
アンソニー・クロフォード - ギター (on #1)
ラリー・バイロム - ギター (on #2, #4, #6, #7)、スライドギター (on #5)
マイク・ロウラー - アディショナル・キーボード (on #1, #4)
マイケル・ローズ - ベース・ギター (on #1, #2, #4, #5, #6, #7)
ラス・カンケル - ドラムス (on #1, #4, #5)
エディ・ベイヤーズ - ドラムス (on #6)
バシリ・ジョンソン - パーカッション (#3を除く全曲)
ランドール・ブラムブレット - サクソフォーン (on #1, #7, #8)
ジム・ホーン - サクソフォーン (on #4, #7)
ハーヴェイ・トンプソン - アディショナル・サクソフォーン (on #7)
* マイケル・ヘインズ - トランペット (#7)

スティーヴ・ウィンウッド自身が多岐にわたる楽器を担当しているほか、リズム隊としてジム・キャパルディ、ラス・カンケル、エディ・ベイヤーズ、マイケル・ローズ、バシリ・ジョンソンらが参加。ギターにはアンソニー・クロフォード、ラリー・バイロム、ホーンセクションにはランドール・ブラムブレット、ジム・ホーン、ハーヴェイ・トンプソン、マイケル・ヘインズが名を連ねています。これらのベテランミュージシャンたちの貢献が、本作のサウンドを形成しています。

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