リプレイ (小説)

ケン・グリムウッド『リプレイ』解説

『リプレイ』は、ケン・グリムウッドが1987年に発表したSF小説です。心臓発作で突然死んだ男が、18歳の時に記憶を持ったまま戻り、人生をやり直すという斬新な設定で、読者を深く引き込みます。タイムリープもの、ループものと呼ばれる作品群の中でも、特に高い評価を得ている作品の一つです。

あらすじ

主人公のジェフ・ウィンストンは、ラジオ局のディレクターとして平凡な毎日を送っていました。しかし、43歳の時、突然の心臓発作で命を落とします。次に彼が目を覚ました時、そこは1963年、18歳の頃の自分に戻っていました。過去の記憶を持ったまま、彼は新たな人生を歩み始めます。

ジェフは、未来の知識を活かして経済的な成功を収めたり、過去に果たせなかった夢を実現したりと、文字通り人生を「リプレイ」します。しかし、何度人生をやり直しても、彼は同じ年の同じ時刻に再び死を迎えてしまうのです。絶望と諦念に苛まれながらも、彼は同じように人生を繰り返している女性、パメラと出会い、再び人生と向き合うようになります。

繰り返されるリプレイの中で、2人は様々な人生を経験します。成功と挫折、愛と別れ。そして、次第にリプレイ期間が短くなっていく中で、彼らは避けられない「終わり」、つまりリプレイの終了が近づいていることを知るのです。

登場人物

オリジナルの人生（リプレイ前）

ジェフ・ウィンストン: 主人公。ラジオ局のディレクター。
リンダ・ウィンストン: ジェフの妻。子宮外妊娠が原因で子供を産めない体となり、ジェフとの関係は疎遠になっている。
ジュディ・ゴードン: ジェフの学生時代の恋人。
マーティン・ベイリー: ジェフの親友。離婚後、自殺する。
パメラ・フィリップス: ジェフとは面識がない。二児の母。ジェフの死の9分後に心臓発作で死亡。

リプレイでのジェフの主な人生

1回目: 巨大コングロマリット「未来社」の創業者。
2回目: 資産運用会社の経営者。
3回目: 放蕩生活を送る。
4回目: 堅実な投資家。
5回目: 新聞広告で「予言」をする。
6回目: ベストセラー作家。
7回目: 隠遁生活を送る資産家。
8回目: 投資家、パトロン。

作品の魅力

『リプレイ』の魅力は、単なるタイムリープものとしてだけでなく、人生の意味や価値について深く考えさせられる点にあります。主人公が繰り返す人生の中で、様々な選択をし、様々な経験をする中で、何が本当に大切なのか、どのように生きるべきなのかを模索する姿は、読者の心に強く響きます。

また、SF的な設定でありながら、登場人物たちの感情や人間関係が丁寧に描かれており、共感しやすい点も魅力の一つです。特に、パメラとの出会いと、二人が共に「終わり」に向かっていく過程は、感動的です。

受賞歴と評価

1988年度 世界幻想文学大賞 受賞

SF作品としての評価も高く、多くの推奨読書リストに選ばれています。

関連作品

未来の想い出
リプレイJ - 本作が原案となった日本の漫画作品
君といた未来のために 〜I'll be back〜 - 本作が原作となった日本のテレビドラマ
青春アドベンチャー - 本作をラジオドラマ化したNHK-FMのラジオ番組

『リプレイ』は、SFファンだけでなく、人生について深く考えたいすべての人におすすめできる傑作です。

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