リミッター (音響機器)

リミッター：音の強弱を制御するエフェクター

リミッターは、オーディオ信号のダイナミックレンジを制御するエフェクターの一種です。入力信号が予め設定された閾値を超えると、その超過分を圧縮することで、ピークレベルを抑え、音の歪みやクリッピングを防ぎます。

リミッターの仕組みと効果

リミッターは、入力音量が閾値を超えた際に、その超過分を圧縮比（レシオ）に従って減少させます。例えば、レシオが4:1であれば、閾値を超えた信号は4分の1に減衰されます。レシオは、通常、非常に大きな値（10:1以上、場合によっては∞:1）に設定されます。これにより、ピークレベルを一定範囲内に抑え、音質の劣化を防ぐことができます。

リミッターは、以下のような用途で使用されます。

録音時: 録音機器への過大入力による歪みを防止
放送時: 送信機への過変調を防ぎ、クリアな放送を実現
* PA時: スピーカーやアンプなどの機器への負担を軽減し、破損を防ぐ

リミッターはコンプレッサーとよく似た電子回路を使用しており、両方の機能を備えた機種もあります。しかし、リミッターはコンプレッサーよりも閾値が高く、圧縮比が大きいため、より強力なピーク抑制を実現します。

また、リミッターは音質への影響も及ぼします。例えば、アタック音が強い楽器では、リミッターによってアタックが抑えられ、相対的にサステインやディケイが強調されることで、音色が変化します。そのため、意図的に音質を変えるためのエフェクトとしてリミッターを使用することもあります。

Brickwallリミッター

Brickwallリミッターは、非常に厳密な閾値制御を行うリミッターです。従来のリミッターでは、アタック時間が長いと、瞬間的に発生する過大入力が閾値を超えてしまう可能性がありました。しかし、Brickwallリミッターは、アタック時間を極めて短く設定することで、この問題を解消し、より厳密に出力レベルの上限を実現しています。まるで堅いレンガの壁のように、信号を完全に遮断するイメージです。

True Peak Limiter

デジタルオーディオでは、D/A変換時にサンプル間で閾値を超える「Inter-sample peak」が発生することがあります。これは、デジタル信号の断続的な性質と、アナログ信号の連続的な性質の差から生じる現象です。True Peak Limiterは、このInter-sample peakを検出し、クリッピングを防ぐ機能を持つリミッターです。デジタル波形を補間処理することで、D/A変換後のアナログ信号においても、クリッピングを確実に防止します。

まとめ

リミッターは、オーディオ信号のピークレベルを抑え、歪みやクリッピングを防ぐための重要なエフェクターです。その高度な機能と正確な制御によって、録音、放送、PAなど、様々な場面で活用されています。BrickwallリミッターやTrue Peak Limiterは、より高度なピーク制御を必要とする用途に最適です。適切な設定と使用によって、音質の向上と機器の保護を実現できます。

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