リュドヴィック＝ナポレオン・ルピック

リュドヴィック＝ナポレオン・ルピック（Ludovic-Napoléon Lepic、1839年12月17日 - 1889年10月27日）は、フランスの貴族、画家、考古学者、そして芸術の擁護者として多岐にわたる才能を発揮した人物です。特に、印象派の画家エドガー・ドガとの親交が深く、芸術運動にも深く関わったことで知られています。

生い立ちと教育

パリで生まれたルピックは、ナポレオン時代の将軍ルイ・ルピックを祖父に持ち、父ルイ＝ジョセフ＝ナポレオン・ルピックもまた軍人としてナポレオン3世の支援を受けたという、軍人一家に生まれました。しかし、ルピック自身は軍人の道を選ばず、画家としての才能を開花させるべく、美術教育を受ける道を選びました。初期には、ベルギー王の宮廷画家であるワッペルスに師事し、その後、パリで動物画家のシャルル・ヴェルラに師事しました。また、版画の才能も認められ、1852年には版画家の協会に入会、1861年にはルーブル美術館内に動物版画制作工房を設立するなど、版画家としての活動も活発に行いました。さらに絵画技術の向上を目指し、1863年からはシャルル・グレールのスタジオで、翌年にはアレクサンドル・カバネルのスタジオで学びました。

結婚と考古学への興味

1865年、ルピックはシャンベリ近くに城を持つ一族の娘と結婚し、3人の娘をもうけました。この頃からルピックは考古学にも強い興味を持つようになり、1869年にはパリの考古学協会の会員となりました。1872年には博物館を設立し、古代の武器や道具に関する図解入りの著作を出版するなど、考古学者としても精力的な活動を展開しました。

芸術家としての活動

1850年代の終わり頃からは、画家としての腕も上達し、エドガー・ドガと親交を深めます。1860年には、画家たちのグループ「Cercle de l'union artistique」の設立に参加するなど、芸術活動にも積極的に参加しました。ドガを通じて印象派の画家たちとも親しくなり、1874年からは印象派展の発起人および参加者としてその運動を盛り上げました。また、「L'eau-forte mobile」と称する独自の版画技法を開発したとされています。

実験考古学への貢献

ルピックは、1869年から1870年にかけて、先史時代の武器や道具を再現して実験を行う「実験考古学」に取り組み、遺跡の発掘にも参加するなど、考古学の分野においても独自の貢献を果たしました。その功績が認められ、1873年にはサヴォワの科学・文芸アカデミーの会員に選出されました。

画家としての晩年

1876年、ルピックはピカルディの海岸を訪れ、風景画家フランシス・タッテグランと出会ったことをきっかけに、海岸風景を描くようになりました。1877年には、サロン・ド・パリで海岸を描いた作品が入選するなど、画家としても成功を収めました。

ルピックは、多岐にわたる分野で才能を発揮し、芸術と科学の両分野において重要な貢献を果たした人物として、後世に名を残しています。彼の作品は、絵画だけでなく版画、考古学の研究においても高く評価されています。

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