リラ (楽器)

リラ：古代から現代へ繋がる弦楽器の物語

リラは、古代ギリシャで発祥した弦楽器です。竪琴の一種として知られ、その歴史は古く、ギリシャ神話にも登場するほどです。時代を経る中で、撥弦楽器だけでなく、擦弦楽器や、枠にベルをつけた打楽器など、様々な形態の楽器にも「リラ」の名が用いられるようになり、現在では多くの種類が存在します。この記事では、リラとその歴史、構造、種類、そして現代のライアーについて解説します。

リラの歴史：神話と現実

ギリシャ神話では、リラを発明したのはヘルメース神であるとされています。彼は亀の甲羅を皮と角で覆ってリラを作り出し、アポローン神に献上したと伝えられています。この神話からも、リラが古代ギリシャにおいて重要な楽器であったことが伺えます。

リラの起源については、南欧、西アジア、北アフリカなど、様々な地域が候補として挙げられています。リュディア帝国周辺の小アジアやトラキアなど、ギリシャ植民地にもリラの演奏にまつわる神話が数多く残っており、これらの地域との関連性が指摘されています。また、古代ギリシャ人がエジプトの箱形弦楽器を「キッサル」と呼んでいたことから、リラは古代ギリシャ以前から近隣地域に存在し、そこからギリシャにもたらされた可能性も示唆されています。

リラの構造と演奏法

リラのフレームは中空の共鳴箱からなり、そこから2本の腕が立ち上がっています。腕の上端は横木で連結され、弦は横木とブリッジ、またはテイルピースの間に張られます。弦の数は時代や地域によって異なり、4弦、7弦、10弦などが用いられていました。

演奏方法は、撥を用いて弦を弾くのが一般的でした。右手で高音弦を、左手で低音弦を操ることで、様々な音色を奏でることができました。弓を使うことはなかったとされています。調弦方法は、竜頭を締めたり、弦をかける位置を変えたりするなど、複数の方法が用いられていたようです。

リラの種類：多様な姿

リラは、古代ギリシャの古典的なリラから、現代のクレタ島やマケドニア地方で使われる弓で演奏するリラまで、多様な種類が存在します。

ギリシャの古典的リラ

フォルミンクス: 古代ギリシャを代表するリラの一種です。
キタラ: フォルミンクスとよく似た楽器ですが、構造や演奏法に若干の違いがあります。

他の民族楽器

クレタのリラ: 現代でもクレタ島で演奏されるリラです。ヴァイオリンのように弓を用いて演奏されます。
エチオピアのクラル: 5～6弦の竪琴で、撥弦楽器として演奏されます。現代では電気的に増幅されたものも存在します。

現代のライアー：新たな命を吹き込まれたリラ

「ライアー」は、ドイツ語で竪琴を意味する言葉ですが、現代のライアーは、古代ギリシャのリラとは異なる楽器です。シュタイナー教育のために開発された楽器であり、教育や治療、音楽療法など、幅広い分野で用いられています。

エドムント・プラハトとローター・ゲルトナーによって1926年に開発されたゲルトナー・ライアーは、現代ライアーの代表的なものです。ゲルトナー・ライアーは、その後様々な派生モデルを生み出し、現在でも世界中で製作、演奏されています。日本では1998年に初めてライアーが製作されました。

現代のライアーは、古代のリラを思わせる形状をしておりながらも、独自の進化を遂げています。金属弦を使用し、432Hzに調律されることが多いなど、独自の特性を持っています。ジブリ映画『千と千尋の神隠し』の主題歌で有名になった木村弓さんのライアー演奏も、現代ライアーの知名度向上に大きく貢献しました。

まとめ

リラは、長い歴史を持つ弦楽器です。神話から現代の音楽シーンまで、その存在感を示し続けています。古代ギリシャの楽器から発展した現代のライアーは、新たな音楽表現の手段として、これからも進化を続けるでしょう。

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