リンカーン・MKZ

リンカーンMKZ：高級セダンの歴史と終焉

リンカーンMKZは、フォード社が製造し、リンカーンブランドから販売されていた高級セダンです。その歴史は、往年の名車「ゼファー」の系譜を受け継ぐところから始まります。

初代MKZ (2007年-2012年): ゼファーの後継として

2004年、ニューヨーク国際オートショーで発表されたコンセプトモデルは、かつてのリンカーン・ゼファーの名を冠していました。2005年には、LSの後継モデルとしてゼファーが発売されました。しかし、2007年、リンカーンの新しい命名規則に従い、MKZへと改名されました。この名前の発表には、当初「マーク・ゼー」という発音から「マーク・ズィー」へと変更されるというエピソードがあります。

初代MKZは、フォード・フュージョンやマーキュリー・ミランとプラットフォームを共有する姉妹車でした。ボディパネルの多くは共通でしたが、フロントフェイスなどのデザインや内装は、それぞれ個性を際立たせていました。パワートレーンは3.0L V6エンジンと6速ATの組み合わせのみで、駆動方式はFFのみでした。発売当初はV6エンジンのみでしたが、2007年モデルでは3.5L V6エンジンに換装され、AWDモデルも追加されました。さらに、2009年にはフェイスリフトを受け、MKSで採用された新しいリンカーンファミリーフェイスが導入されました。姉妹車に先行して、2010年にはハイブリッドモデルも登場しました。これは、リンカーン初のハイブリッド車であり、同時に初の直4エンジン搭載車でもありました。ハイブリッドモデルのパワートレーンは、アトキンソンサイクルの2.5L直列4気筒エンジンと電気モーターの組み合わせでした。

2代目MKZ (2012年-2020年): 大きな進化と販売終了

2012年、北米国際オートショーで2代目MKZのコンセプトモデルが初公開され、同年4月のニューヨーク国際オートショーで量産モデルが発表されました。初代モデルと比較すると、エクステリアはホイールベースを含む全てが一回り大きくなっていました。メカニズムも刷新され、従来の3.7L V6エンジンに加え、2.0L エコブーストエンジンが追加されました。ハイブリッドモデルも、2.0Lエンジンとモーターの組み合わせのアトキンソンサイクルを採用し、米国EPAの燃費評価で高い数値を達成しました。

2代目MKZの特徴として、量産車世界最大面積を誇る「リトラクタブルパノラミックルーフ」が挙げられます。このルーフは、キャビン全体を覆う巨大なガラスで、ポップアップして後方へスライドする仕組みでした。しかし、近年の米国市場におけるSUV人気やセダン市場の縮小を受け、2020年7月に、コンチネンタルと共に生産・販売が終了しました。これにより、リンカーンは100年以上にわたるセダン生産の歴史に幕を閉じました。

まとめ

リンカーンMKZは、ゼファーから受け継いだ伝統と、時代の変化に対応した進化を遂げた高級セダンでした。ハイブリッドモデルの導入や、革新的なパノラミックルーフなど、多くの魅力的な特徴を持っていましたが、市場のトレンドの変化によって販売終了という決断に至りました。その歴史は、自動車産業における時代背景の変化を反映した一つの象徴と言えるでしょう。

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