リンスク条約

リンスク条約：北方戦争下のプロイセンにおける同盟とその限界

リンスク条約は、1655年11月2日（ユリウス暦）/11月12日（グレゴリオ暦）に締結された、公領プロイセンと王領プロイセンの間の同盟条約です。この条約は、当時北方戦争の渦中にあった両プロイセンが、共通の脅威であるスウェーデンからの防衛を目的として締結されました。

当時、ブランデンブルク選帝侯であり、プロイセン公でもあったフリードリヒ・ヴィルヘルムは、王領プロイセンの貴族たちと協議し、ブランデンブルク軍を王領プロイセンに駐留させることで合意しました。これは、スウェーデン軍の侵攻から王領プロイセンを守るための措置でした。しかし、この条約にはいくつかの重要な限界がありました。

まず、王領プロイセンの主要都市であったダンツィヒ（グダニスク）、ソーン（トルン）、エルビング（エルブロンク）が条約への参加を拒否しました。これらの都市は、独自の防衛力を持っており、ブランデンブルク軍の駐留を必要としていませんでした。このため、ブランデンブルク軍はこれらの都市に駐留することができず、結果として、ダンツィヒを除く全ての都市がスウェーデン軍に降伏することになりました。

さらに、王領プロイセンの残りの地域も、マリエンブルクを除いて全てスウェーデンに占領されました。フリードリヒ・ヴィルヘルムの軍勢は、スウェーデン軍の追撃を受け、最終的にはケーニヒスベルクまで撤退を余儀なくされました。そして、1656年1月には、ケーニヒスベルク条約において、スウェーデンの宗主権を受け入れることとなりました。

リンスク条約は、プロイセンがスウェーデンの侵攻に対抗しようとした試みの一つでしたが、主要都市の不参加やスウェーデン軍の圧倒的な軍事力の前に、その目的を達成することはできませんでした。この条約は、その後のプロイセンの歴史において、重要な転換点となりました。ブランデンブルク選帝侯は、スウェーデンの宗主権を受け入れたことで、一時的にその支配下に入りましたが、その後、巧みな外交戦略と軍事力によって、プロイセンを独立国家へと導いていくことになります。

リンスク条約は、北方戦争におけるプロイセンの苦難を象徴する出来事であると同時に、その後のプロイセンの発展に向けた重要な一歩でもありました。

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