リン青銅

リン青銅：優れた特性を持つ銅合金

リン青銅は、銅を主成分とし、錫を添加した青銅の一種で、製造過程で脱酸のためにリンが加えられることで、わずかにリンを含有する合金です。この微量のリンが、リン青銅に特有の性質を与えています。

特徴

リン青銅の最大の特徴は、その優れた機械的性質です。具体的には、以下の点が挙げられます。

高い強度: 優れた強度を持ち、様々な環境下での使用に耐えられます。
優れたバネ性: 曲げや絞り加工に適しており、バネとしての利用に最適です。
良好な加工性: 成形加工が容易で、複雑な形状の部品製造にも対応できます。
高い電気伝導率: 電気を通しやすく、電気部品の素材として重宝されます。

これらの特性に加え、リン青銅は音響特性にも優れており、楽器の材料としても利用されます。具体的には、管楽器やシンバルなどに使用されており、その美しい音色を支えています。

歴史

青銅自体は古代から知られている合金ですが、リン青銅は比較的歴史が新しい材料です。19世紀頃、鉄の均一鋳造技術が未熟だった時代に、大砲の製造に利用されました。その後、第二次世界大戦後の電子部品の軽量化・小型化の流れの中で、リン青銅の優れた特性が注目され、本格的な活用が始まりました。特に、デジタル家電や携帯電話の普及に伴い、その用途は急速に拡大し、現在に至っています。

材料記号

リン青銅は、JIS規格において、頭文字Cで始まる4桁の記号で表されます。以下に代表的なリン青銅の材料記号と組成を示します。

リン青銅

C5050: 錫1.0～1.7％、リン 0.15％以下、残りが銅
C5111: 錫3.5～4.5％、リン 0.03～0.35％、残りが銅
C5102: 錫4.5～5.5％、リン 0.03～0.35％、残りが銅
C5191: 錫5.5～7.0％、リン 0.03～0.35％、残りが銅
C5212: 錫7.0～9.0％、リン 0.03～0.35％、残りが銅

ばね用リン青銅

C5210: 錫7.0～9.0％、リン 0.03～0.35％、残りが銅
C5240: 錫9.0～11.0％、リン 0.03～0.35％、残りが銅

これらの記号は、JIS H 3110に詳細が規定されています。

用途

リン青銅の用途は多岐にわたります。その優れた特性を活かし、様々な分野で利用されています。主な用途としては、以下のようなものが挙げられます。

電気・電子部品: コネクタ、リレー端子、スイッチ部品など、電気を通す必要がある部品に広く利用されています。
機械部品: ベアリングフレーム、ブレード材、バネなど、高い強度や耐久性が求められる部品に使用されています。
楽器: 管楽器やシンバルなど、美しい音色を出すために使用されています。

まとめ

リン青銅は、銅をベースに錫と微量のリンを加えることで、強度、バネ性、加工性、電気伝導率に優れた特性を発揮する合金です。その多岐にわたる用途は、現代社会に不可欠な存在となっています。今後も、技術の進歩とともに、リン青銅の新たな可能性が広がることが期待されます。

関連文献

MurakawaKiyoshi『圧延した低錫りん青銅版のたわみの塑性』1952年。 http://airex.tksc.jaxa.jp/dr/prc/japan/contents/IS0700643000/IS0700643.pdf

関連項目

黄銅 - 銅と亜鉛の合金。
洋白 - 銅と亜鉛とニッケルの合金。
白銅 - 銅とニッケルの合金。
* 青銅 - 銅と錫の合金。

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