ルイス・フェルナンド・デ・オルレアンス

ルイス・フェルナンド・デ・オルレアンス・イ・ボルボン：波乱万丈なスペイン王子の生涯

ルイス・フェルナンド・マリア・サカリアス・デ・オルレアンス・イ・ボルボン（1888年11月5日 - 1945年6月20日）は、スペインの王族であり、スペイン王子（Infante de España）の称号を持っていました。

生い立ちと教育

ルイスは、スペイン王子・ガリエラ公アントニオと、スペイン王女エウラリアの次男として生まれました。父アントニオはフランス王ルイ・フィリップの孫であり、母エウラリアはスペイン女王イサベル2世の末娘という、いずれも高貴な血筋の出でした。洗礼名にある「サカリアス」は、誕生日の11月5日が聖ザカリアの聖名祝日であったことに由来します。1899年からは兄アルフォンソと共にイングランドに留学し、1904年までイエズス会が経営するボーモント・カレッジで学びました。

スキャンダラスな事件と称号剥奪

1924年10月、ルイスは違法薬物の輸入に関与した疑いをかけられ、滞在していたフランスからスペインへ強制送還されるという事件を起こします。これを受け、従兄にあたる国王アルフォンソ13世は、ルイスからスペイン王族としての称号と特権を剥奪しました。フランスにもスペインにも居場所を失ったルイスは、ポルトガルのリスボンへと移住します。しかし、1926年3月には女装してスペイン・ポルトガル国境を越えようとして逮捕されるという奇行に及びました。この時、所持品からは密輸品が見つかりましたが、薬物は所持していませんでした。さらに1935年2月には、風俗取締の捜査中に再びフランスで逮捕され、国外退去処分となっています。

結婚と晩年

1929年、ルイスはアメリカ人舞台女優のメイベル・ギルマン・コーリーと婚約しますが、この結婚は実現しませんでした。しかし、1930年7月には、アメデ・ド・ブロイ公子の未亡人であるマリー・セイと婚約します。マリーは、ショーモン城の女城主であり、アルベール・ド・ブロイ公爵の三男の未亡人でした。マリーはルイスより31歳も年上で、婚約当時72歳という高齢であり、この結婚はスキャンダルとして大きく取り上げられました。周囲の反対を押し切り、2人は1930年9月30日にロンドンの戸籍登記所で民事婚を、同年10月4日にはサンレーモのサン・シーロ聖堂で宗教婚を挙げました。結婚後、夫妻はルイスが母親から相続したサンレーモの屋敷で生活を送りました。妻マリーとは1943年に死別しています。晩年はパリの養護老人施設で過ごし、1945年に息を引き取りました。遺体はパリ市内の教会の墓地に埋葬されています。

ルイス・フェルナンド・デ・オルレアンス・イ・ボルボンは、スペイン王子という恵まれた身分でありながら、数々のスキャンダルと奇行によってその名を知られることとなりました。彼の波乱に満ちた生涯は、スペイン王室の歴史においても異彩を放っています。

参考文献
José Carlos García Rodríguez. El infante maldito. La biografía de Luis Fernando de Orleans, el más depravado príncipe Borbón. Barcelona: Espasa (Grupo Editorial Planeta), 2012. ISBN 978-84-670-0428-1.
Mateos Sáinz de Medrano, Ricardo. Los desconocidos Infantes de España: Casa de Borbón. Barcelona: Thassàlia, 1996. ISBN 84-8237-054-5.

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