ルイズ・アベマ

ルイーズ・アベマ：華麗なるベルエポックの画家

ルイーズ・アベマ（1853年-1927年）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスを代表する画家、彫刻家です。パリの裕福な家庭に生まれ、その恵まれた環境と才能によって、ベルエポック時代の華やかな社交界を描いた数々の作品を残しました。アベマの絵画は、洗練されたタッチと色彩感覚、そして当時の人々の優雅な生活様式を見事に捉えた描写で知られています。

生涯：芸術家としての軌跡

アベマは、パリ＝オルレアン鉄道会社の社長を務めた父と、洗練された社交界に身を置いていた母のもとに生まれました。幼少期から芸術への才能を示し、シャルル・シャプラン、ジャン＝ジャック・エネ、カロリュス＝デュランといった巨匠たちから指導を受けました。

18歳で描いたサラ・ベルナール（1844年-1923年）の肖像画は、アベマを一躍有名にしました。当時、ベルナールはフランスを代表する名女優であり、アベマとベルナールの間には恋愛関係があったとされています。このことは1875年に公になり、二人の関係は当時大きな話題となりました。ベルナール自身もアベマへの敬意を表し、大理石からアベマの胸像を制作したほどです（現在、パリのオルセー美術館に所蔵）。

アベマは、フランス芸術サロンへも定期的に作品を出展し、1881年には佳作を受賞するなど高い評価を得ていました。1893年のシカゴ万国博覧会には、フランスを代表する女性芸術家として参加しています。

70歳を超えるまで精力的に創作活動を続け、1906年にはレジオンドヌール勲章を受章。絵画活動と並行して、『ラ・メール』誌にイラストを寄稿するなど幅広い活動を行っていました。また、マドレーヌ・ルメールのサロンにも通い、そこで出会ったロベール・ド・モンテスキューに、詩「アビム（Abîme）」として皮肉たっぷりに描かれるというエピソードも残っています。

アベマは1883年から1908年までパリのラフィット通りにアトリエを構え、そこで多くの作品を制作しました。1927年、74歳で生涯を閉じ、モンパルナスに眠っています。

作品：ベルエポックの光と影

アベマの作品は、主に肖像画、風俗画、そして静物画から成り立っています。その多くは、ベルエポック時代の社交界の華やかさを反映したもので、優雅なドレスを身につけた女性や、洗練された室内空間が、繊細な筆致で描かれています。

代表的な作品として、ジュール・クラレティ、アレクサンドル・ファルギエール、レオ・デリブスの肖像画などがあります。また、「四季（Quatre Saisons）」という連作ポスターは、批評家ジョリス＝カルル・ユイスマンスによって取り上げられるなど、美術史においても重要な位置を占めています。

アベマの絵画は、単なる人物や風景の描写にとどまらず、当時の社会風俗や文化、そして人間関係を映し出す鏡のような存在です。その作品からは、ベルエポック時代の華やかさとともに、その裏側にある影や複雑さも感じ取ることができます。

アベマとベルエポック

アベマの作品は、ベルエポック時代の芸術文化を理解する上で重要な手がかりとなります。彼女の作品を通して、当時の社会の雰囲気、ファッション、美術様式などを知ることができます。また、アベマ自身の生涯も、ベルエポック時代の典型的な女性芸術家の生き方を示す一つの例となっています。

アベマの作品は、多くの美術館や個人コレクターによって所蔵されており、現在でも高い評価を得ています。彼女の芸術は、時代を超えて人々を魅了し続ける、普遍的な魅力を秘めていると言えるでしょう。

参考文献

Dictionnaire Bénézit
André Roussard, Dictionnaire des peintres à Montmartre, Paris, 1999
Denise Gellini, Louise Abbéma, peintre dans la Belle-Époque, Le Jardin d'essai, 2006
Anne Marie Belfort および Chantal Belfort, Pierre Cardin présente Sarah Bernhardt, catalogue d'une exposition, 1976

もう一度検索