ルイ＝ジョゼフ・ド・フランス

ルイ＝ジョゼフ王子：夭折のドーファン

ルイ＝ジョゼフ・ド・フランス王子。1781年10月22日、フランス国王ルイ16世とマリー・アントワネット王妃の間に生まれた待望の長男は、フランス王位継承順位第一位となるドーファン（王太子）の称号を得ました。彼の誕生は、王弟プロヴァンス伯（後のルイ18世）らによる王位継承への野心を打ち砕くこととなりました。パリ市民は王子誕生を祝し、国王夫妻に豪華な贈り物、音楽時計や乳幼児用品などを献上しました。

王子は数人の乳母に囲まれて成長しました。しかし、幼少期から病弱だったルイ＝ジョゼフは、乳母の一人から結核を感染してしまいます。姉のマリー・テレーズ（マダム・ロワイヤル）と共に両親の深い愛情の中で育ちましたが、その幼い身には、既に病魔の影が忍び寄っていました。同時代の記録によると、ルイ＝ジョゼフは驚くほど聡明な子供だったと伝えられています。国王夫妻は王子の教育に熱心に取り組みましたが、彼の健康については楽観的であったようです。

1784年4月、王子は高熱に襲われ、ラ＝ミュエットで治療を受けました。一時は回復したものの、1785年3月には種痘を受け、これが彼の健康状態を更に悪化させてしまいます。1786年4月、再び高熱に苦しむルイ＝ジョゼフ。その発熱は結核の初期症状でした。やがて、彼の背骨が曲がり始めるなど、病状は深刻さを増していきます。1786年10月からは歩行が困難となり、鉄製のコルセットを装着せざるを得なくなりました。

1788年1月からは、高熱が続き、体力を急速に消耗。病状は悪化の一途を辿ります。医師団は、脊椎カリエス（脊椎結核）と診断し、王子の余命は短いことをマリー・アントワネットに告げました。母は絶望の淵に突き落とされました。

そして1789年6月4日、フランス三部会召集中の出来事でした。わずか7歳と半年という短い生涯を終え、ルイ＝ジョゼフ王子はムードンで息を引き取りました。王室は深い悲しみに包まれ、国民も王子の死を悼みました。彼の夭折は、フランス革命の暗い影を更に濃くし、王室の不安定さを象徴する出来事となりました。ルイ＝ジョゼフ王子の短い生涯は、フランス王室の栄光と悲劇を物語る、一つの象徴となりました。聡明で愛された王子が、病魔に奪われた短い生涯は、多くの人々の心に深い悲しみと、歴史の転換点としての記憶を残しました。彼の死は、フランス王室だけでなく、フランス国民の未来をも大きく変える転換期となったのです。

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