ルキウス・アエリウス・カエサル

ルキウス・アエリウス・カエサル：ハドリアヌス帝の影と跡継ぎ

ルキウス・アエリウス・カエサル (101年1月13日 - 138年1月1日) は、ローマ帝国の歴史において重要な役割を担ったものの、短い生涯を終えた人物です。彼の名前は、ハドリアヌス帝の後継者として期待されたものの、早世したという事実と、その死の謎めいた状況から、歴史に深い影を落としています。

華麗なる出生とハドリアヌス帝との関係

元の名はルキウス・ケイオニウス・コンモドゥス。106年に執政官を務めた同名の父をもち、裕福な家庭に生まれ育ちました。その後、ハドリアヌス帝の庇護を受け、130年には法務官に任命されるなど、順調にキャリアを積んでいきます。ハドリアヌス帝はアエリウスを寵愛し、136年には、自身に子供がいないことから、アエリウスを養子に迎えます。同時にアエリウスは「カエサル」(副帝)の称号を与えられ、帝位継承者としての道を歩み始めることになります。改名もこの時に行われ、アエリウス・カエサルと名乗るようになります。

パンノニアへの派遣と急死

コンスルに任命された後、アエリウスはパンノニアへと派遣されました。しかし、アエリウスは病弱であったとされ、ハドリアヌス帝は後にこの養子縁組を後悔するようになります。パンノニアでの任務を終え、ローマに帰還したアエリウスは、新年を迎えるにあたり、ハドリアヌス帝への感謝の演説を準備していました。しかし、薬を服用した後に急死するという、不可解な最期を遂げます。

謎に満ちた死とその後

アエリウスの急死は、ハドリアヌス帝に大きな衝撃を与えました。アエリウスの病弱さに不満を持っていたハドリアヌス帝は、新年の行事を妨げないため、喪に服することを禁じ、さらにはアエリウスが存命中から後継者を探していたと公言するまでに至りました。しかし、アエリウスの死後も、彼の息子であるルキウス・ウェルスの面倒を見るなど、完全にアエリウスを無視したわけではありませんでした。ルキウス・ウェルスは、新たにハドリアヌス帝の養子となったアントニヌス・ピウスの養子に迎え入れられるという、異例ともいえる処遇を受けています。

歴史における位置付けと評価

ルキウス・アエリウス・カエサルの生涯は、短く、謎に満ちたものでしたが、ローマ帝国の後継者問題に大きな影響を与えたことは間違いありません。彼の急死によって、ハドリアヌス帝の継承計画は大きく狂い、後のアントニヌス朝へと続く帝位継承の道筋に変化をもたらしました。また、彼がもし長生きしていたら、ローマ帝国の歴史はどのように変化したのでしょうか？彼の早すぎる死は、歴史家の想像力を掻き立て、様々な憶測や解釈を生み出していると言えるでしょう。

フィクションにおける描写

ルキウス・アエリウス・カエサルは、近年では漫画や映画にも登場しています。例えば、人気漫画『テルマエ・ロマエ』や、それを原作とした映画『テルマエ・ロマエ』(2012年)、『テルマエ・ロマエⅡ』(2014年)では、俳優の北村一輝が彼を演じています。これらの作品を通して、アエリウス・カエサルという人物は、現代社会においても、再び注目を集め、歴史の表舞台に返り咲いていると言えるでしょう。

参考文献

* アエリウス・スパルティアヌス他著/南川高志訳『ローマ皇帝群像<1>』　京都大学学術出版会、2004年1月、ISBN 4-87-698146-9

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