ルクレティアとタルクィニウス (ジョルダーノ)

ルカ・ジョルダーノ『ルクレティアとタルクィニウス』

『ルクレティアとタルクィニウス』は、イタリアのバロック期におけるナポリ派の巨匠ルカ・ジョルダーノによって1663年に描かれた重要な作品です。この絵画は、古代ローマの歴史に名を刻むルクレティアという女性と、彼女に対して凶悪な行為を働いたセクストゥス・タルクィニウスの物語を描写しています。現在、この作品はナポリのカポディモンテ美術館に収蔵されており、目録番号はQ 1678です。

歴史的背景

本作品は、第13代ヴァスト侯爵アルフォンソ・ダヴァロスがカポディモンテ美術館に遺贈したコレクションの一部として知られています。この絵画は、以前ドレスデンのアルテ・マイスター絵画館に展示されていたこともあり、ピーテル・タニェによって版画化された記録も残っています。ジョルダーノの技法は、色彩豊かで動的な表現が特徴であり、絵画の持つストーリーに強い感情を加えています。

作品の内容

ルクレティアの物語は、古代ローマのトラウマティックな瞬間を切り取った非常に悲劇的なもので、彼女は王の息子セクストゥス・タルクィニウスに暴力を振るわれることになります。ルクレティアは、貞節でありながらもタルクィニウスの驚異的な脅迫に屈してしまいます。彼は、もし彼女が拒み続ければ、彼女とその召使いを殺すと脅迫しました。心の平穏を保つため、ルクレティアはタルクィニウスの要求に従い、その屈辱に耐えることを選びます。しかし、彼女の精神は辛く、その後彼女はこの出来事を語り復讐を求めることとなります。

自らの潔白を示すためにルクレティアは剣で胸を刺し、命を絶つことを決意したのです。この行動は、王制ローマの終焉の引き金となり、共和制ローマへと移行する歴史的な出来事を引き起こしました。絵画の中で、金髪のルクレティアは後ろ姿で寝そべっており、堕落した王子に向けられた恐怖と絶望の表情が見え隠れしています。タルクィニウスは片手を彼女の肩に乗せ、もう一方の手で左側にいる黒人の召使いの方を指差しています。この構図は、彼の力と暴力性を象徴するものであり、鑑賞者は実際にその場に居合わせたような緊迫感を感じます。

関連作品

さらに、パリのルーヴル美術館にはジョルダーノ工房による『ルクレティアとタルクィニウス』という別の作品が存在し、1600年から1625年の間に制作されたとされています。こちらはかつてルイ・ラ・カーズのコレクションに保持されていた作品で、ルーヴル美術館に遺贈されています。他にも、同じテーマで描かれた作品が個人蔵として存在しています。

まとめ

ルカ・ジョルダーノの『ルクレティアとタルクィニウス』は、権力と暴力、そして復讐の物語を力強く表現した美術品であり、古代ローマの歴史が持つ複雑な感情を映し出しています。この作品は、単なる美術品としてだけでなく、歴史や人間の心理を考えるための貴重な資料とも言えるでしょう。

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